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2006.05.06

『エリザベート』感想(5/4)

 連休のまっただ中にまたミュージカル『エリザベート』を観劇してきました。昨年9月以来の再演で、5月4日昼、山口祐一郎さんのトートの初日です。
 ストーリーについては上の東宝のリンク先と、以前に書いた記事にも記されているので、割愛します。内容は、ダブルキャストで新たなトート役として武田真治さんが起用されたこともあり、もしかしたら山口トート版の演出に前回から何らかの変更があるのかも?と思いましたが、前の出演作『レ・ミゼラブル』から今回の初日まで2週間程度しか時間が確保されていなかったこともあるのか、大きい変更はなかったようです。以下の感想について、かなり山口フィルタが入りますがご容赦下さい。

 前日に武田トートの初日を観た友人情報によると、「お召し替えが多かった」「赤いベストには驚いた」「不良のヘッドをやってるぼんぼんが、若さに任せて年上の女性にちょっかい出してるけど拒否されてる感じ」というなかなか楽しい演出だったようですが、山口トートは以前と変わらずに「人ならぬ者」の雰囲気を全身にまとい、衣装も黒ずくめで、朗々たる声で観客を魅了していました。音響効果でエコーがたっぷり効かせられていましたが、あの声ならあんなにエコーは要らないだろうに、と思いました。

 1幕で印象に残ったのは、「退屈しのぎ」の場の、皇后エリザベート(一路真輝さん)がハンガリーにて幼い娘を喪う場面で、トートが口の端をゆがませて浮かべる笑みの表情。基本的には「死の運命にある者を連れて行って何が悪い」と言いたげな冷笑なのですが、瞳はどこか哀しみをたたえて揺れています。昨年の初見時には冷徹さしか感じ取れなかったのに、今回初めてトート閣下の複雑な内面に触れることができました。この場面に1点だけけちをつけるとすれば、「闇が広がる」の導入部の歌声が怖いことでしょうか。声色を変えている上に、エコーが効きまくっているのでなお鳥肌が立ちまくりでした。
 2幕前半の聴かせどころはエリザベートとトートのデュエット「私が踊る時」。山口トートはダンス時にあまり小技を効かせず無駄な動きはしないのだけど、エリザベートをじわじわと着実に死への誘惑で追いつめていく。一路シシィは心を揺るがせつつも毅然と突っぱねる。そんな心理戦が楽しいナンバーでした。
 「微熱」の場で身をやつした侍医の姿から一転、マントを翻して正体を現す時のケレン味も良いです。歌い出す直前の「それがいい!エリザベート、待っていた!」でくるくる変わる艶のある声色には、1幕とは違う意味で鳥肌が立ちました。
 「闇が広がる」を初めとする皇太子ルドルフ(浦井健治さん)との一連の場面では、はっと気づくとルドルフと一緒に運命の糸に引きずられており、従ってあまり細かいトート・ウォッチングをできていません。ルドルフについては、昨年観たのはパク・トンハさんだったので、浦井さんは初見。友人達の評判は悪くはなかったけれど絶賛する話も聞かなかったため、実はさほど強い期待を込めてはいませんでしたが、歌声に伸びがあり、ダンスも割と綺麗、演技もルドルフの陰翳に富んだ性格をさりげなく表現、それに容姿に華もあるしで、意外に「使えるヤツ」と思わせるものがありました。…彼に対して相当に失礼なことを言ってますね、私。

 ルドルフの死後は場面も時代も次々に転換して、トートからルキーニへのナイフ(ヤスリ)投げも決まり、あっという間にエンディングへ。カーテンコールは結構長くやってくれました。何度目かのコール時に一路さんがゾフィー皇太后役の初風諄さんを抱きしめ、初風さんが涙する場面もありました。昨年の公演ではご病気のため休演されていただけではなく、恐らくは演技プランも変えての復帰後初の舞台でいらしたため、様々な感慨をお持ちだったのではないかと想像しています。実際、初演版CDでしか初風さんの演技を知り得なかった筆者が抱いてきたイメージは、「素っ頓狂な面もあるが鋼のように強い母親」というものでしたが、今回の舞台を観て以降は「鉄の鎧に喜怒哀楽を閉じこめて生きてきた母親」に変わりつつあります。
 また、ここまで記してはいませんでしたが、皇帝フランツ・ヨーゼフを演じた鈴木綜馬さんも良かったです。というより、今回トートの次にウォッチしていたのはこの方かも知れません。先月のレミゼの時も思ったのですが、ご自身の演じる役の美点も欠点も深い懐で全て受け入れ、その人物に真っ直ぐに向き合って演じているのが鈴木さんの良いところだと考えています。
 それから1点、あれ?と思ったのは一路さんの演技の変更ですね。少女時代の場面で昨年は確か側転をするなどもっと動きが活発だった筈なのに、今年はそうではありませんでした。単純に演出上の変更なのか、それとも別の事情があるのか、気になります。

 長々と記しましたが、5月の劇場詣ではこれが最後ではありません。来週もまた同一キャストの公演を観る予定です。そのために連休明けの仕事復帰が少し遅れますので、舞台からもらった元気を糧に、腹を据えてしっかりしなければ、と覚悟を決めているところです。

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