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2008.03.08

セクスィー司書

 某SNS経由で、以下の記事の存在を知りました。

ベッカムやジュード・ロウが着用し人気復活!カーディガンが記録的売り上げ : 映画ニュース - 映画のことならeiga.com

 この記事に、イギリスでカーディガンがバカ売れしているブランドのデザイナーの発言として、以下のものが紹介されてます。

“ジョージ”のデザイナーはこのトレンドについて、「カーディガンは非常に着回しの効く服で、ジーンズとも好相性です。男性がスーツの下に着用すれば、セクシーな司書風にも変身できます」とコメント。

 セクシーと言えばやはりNHK『サラリーマンNEO』の「セクスィー部長」だろう、と即座に連想してしまった自分。

 というわけで、以下、「セクスィー司書」を妄想してみました。セクスィー部長を知らないと分からないネタもあるかと思いますが、しばしお付き合いください。

*   *   *

 私は某市と契約している清掃会社にアルバイトとして勤めており、市立図書館の清掃を請け負っている。この図書館の建物は、その属する自治体の規模と同様、決して大きくはないが掃除が楽になるほどではないそこそこの広さで、閲覧スペースも程よく保たれていて過ごしやすい。そして蔵書も絵本から専門書までバランス良く揃えられていて、朝から夜まで来館者が絶えることがない、と聞いている。
 そして、この館にはとある名物司書が働いていることでも密かに有名である。

 ある日、図書館の出入口近くをモップで清掃している時に、カウンター方面から女性の不機嫌そうな甲高い声が聞こえた。
「あなた、私に○○という本を買ってくださるっておっしゃってたわよね?」
 近寄ってみると、顔立ちの整った、派手な化粧とスーツの恐らくは水商売風の女が、カウンターにいる若手職員の男に詰め寄っていた。
「そ、それは確かにそちらからリクエストをいただいた図書ですが、収書会議の結果、当館の収書方針からは外れてしまっているということで購入しないことになりました。国立国会図書館には所蔵されておりますので、相互貸借で借りて、当館内にて閲覧いただくことなら出来ます、と昨日お電話にてご説明申し上げたかと思いますが?」
「私はあの本がこの図書館に欲しかったのよ!そんな外に持ち出して読めない本なんて要らないわよ!」
「し、しかし……」
 カウンターの若手職員はただうろたえるばかりである。その背後から、どこか艶のある男の声がした。
「そう、そこでじっとしていて……今僕が行くからッ!」
「あぁっ!セクスィー司書!」
 長身で整った顔立ちの、金のネックレスを身につけた男が、カーディガンを左肩に引っかけ、白シャツに白パンツ、そして白エプロンを着用して、ラテンのリズムに乗って軽く腰を振りつつ事務室から現れた。
 この奇妙な男に、若手職員がすっかり恐縮した様子で、
「すみません色香司書……こんなことでお手を煩わせてしまって」
と頭を下げている。どうも彼の上司のようだ。色香と呼ばれた男は、
「いいんだョ!」
と事も無げにささやいている。それに対し若手職員は、
「あああああ!何て優しい香りなんだ!心を奪われそうだ!」
 何だこの図書館?と思っていたら、例の女も同じことを考えていたらしく、
「な、なんなのよ、このおっさん!」
と侮蔑を込めて白ずくめの男を睨みつけた。
「せ、セクスィー司書に対して何てことを!色香司書、思い知らせてやって下ください!」
 色香司書は、おもむろに女に近寄った。
「放っておいてすみません。私この者の上司、司書の色香と申します」
「な、なによこの香り!」
 確かに男の周りには不思議な香りが漂っていた。そうだ、思い出した。これは貴重書に挟むナフタリンペーパーの香りだ。
「ちょっと!セクスィー司書なんてちゃんちゃらおかしくてよ。アタシはたくさんの図書館を利用してきたのよ!?そう簡単になんて負……け……な……!」

 女の啖呵が途切れた。丹念に化粧の施された顔の上に、色香司書のしなやかな手がかざされ、ゆっくりと撫でるように妖しく動かされたかと思うと、女がふらりと色香司書の腕の中に仰向けに倒れ込んだ。周囲の空気が桃色に変化した。
「な、何!?この感じ!?」
 女の様子がおかしい。どうやら色香司書の手管に見事にはめられているらしい。色香司書がまばたきもせず女の瞳を見つめながら、情熱的な口調で語る。
「キミは確かに毎日数多くの図書館を見てきている。でも、きみは図書館を貸出の場としてしか捉えていない!確かに貸出も大事だ。しかしッ!本当に図書館を知るには、無垢な心で、図書館のくつろいだ空間に身を委ねてみることなんだよ。まずその手始めとして……僕と……あのリラックスした利用者の皆を……見て!……見えてきたかい?図書館は(図書館は)利用者が(利用者が)大好きだッ(大好きだッ)……!」
「ごめんなさい……私が馬鹿だったみたい……」
と、女はカウンターの前にへなへなと倒れ込んだ。すっかりセクスィー司書に骨抜きにされたようだ。

 桃色だった空気は、いつの間にか透明に戻っていた。放心していた若手職員も、
「おい、キミ!次の利用者が待っている。お仕事の時間だョ!」
という色香司書の声で自分を取り戻し、カウンターでの貸出・返却業務を再開した。
 色香司書はカウンターの上の書類入れで乱れている図書館利用登録申込用紙の束をさりげなく揃えている。几帳面な人なのだ。
 床にへたり込んでいた女も、ふと我に返ったようである。
「あ、あの……」
とまだ半分夢見心地な表情で色香司書にゆっくり歩み寄ろうとしている。しかしその時色香司書が、
「ていっ!ビジネスと色恋は一緒になさらぬようッ!」
とぴしりと言い放つが否や、くるりときびすを返して、呆然とする女を背に颯爽と去っていった。

 そして、私に関わる部分にも変化が起きていた。
「あ、あんなに泥で汚かった出入口が綺麗になっている。そして自動ドアもピカピカに!ありがとう!セクスィー司書!」

*   *   *

 というわけで、「セクスィー司書」、いかがでしたでしょうか?え?オチが弱いですか?そうですか……。

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