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2008.07.18

エルゼビア ライブラリ・コネクト・セミナー2008

 7月17日に東京品川で開催された、標記のセミナーに参加してきました(セミナー公式サイト)。
 今回のテーマは「Return on Investment ~ 図書館への投資効果 ~」。各講演の概要は「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」の記事でも取り上げられているのではしょるとして(^_^)、今回の目玉は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校図書館長のPaula Kaufman(ポーラ・コーフマン)さんによる、午前中最後と午後の最初におよそ2時間という長丁場、2部に分けられた講演であったと思います。
 午前中は「大学の図書館に対する投資:その見返りは?」というテーマでした。
 米国の最高教育に対する公的支援は過去25年にわたり減少しており、それはランド・グランド(土地助成)大学として設立されたイリノイ大学においても例外ではなく、大学に説明責任を求める声が高まっている現状の下、他校との競争上の優位性を保つために、リソースの増強、教員・学生レベルの維持が求められているとのことです。
 と言うわけで「図書館へ1ドル投資する見返りとして、大学はXドルを得た」という「図書館の価値」を証明するための手法について、エルゼビア社他の協力を得て、

  • 図書館の、収入を生み出す活動への貢献の実証
  • 図書館に対する大学の投資の見返りを定量化
  • 図書館と助成金活動の「相関関係」の実証(「因果関係」ではない)

を目的として行われた調査研究というのが、今回の講演の内容でした。
 ポーラさんの発表はかなり盛りだくさんで追いかけるのが大変でした。かたつむりの中の人とか、ちゃんと消化して鋭い突っ込み質問をしていて偉いなあ、と思ったりして。

 途中をざっくり省略して結論だけ申し上げますと、大学は図書館への投資額1ドルにつき、助成金収入として4.38ドルを得た、というROI(return on investment)モデルが導き出されたそうです。
 受講している図書館員に衝撃を与えたのは、その金額よりも、どなたかの質問にもありましたが、図書館先進国の米国の、しかも業界超名門のあの図書館にして、大学の研究への貢献度を計算式で弾き出して証明しなければならないというシビアな事実であったと思います。
 自分としては、うちの職場、中~小規模図書室の集合体なんだけど、いつかああやって図書室の統合作業なんてやる日がくるんだろうか?とか考えてみたり。あと、もっと個人的には、中央館しかないらしく事態の重さが実感としてよく分かってないっぽかった某私大の方のご発言にも驚きましたけれど。でもまあ、単館運用なら仕方ないのかな。
 ちなみにこの研究結果が予算増につながったか?という質問も出ていましたが、

  • そういったことはなく、また、そうした目的でもない。
  • ある1つの時点を見た調査であるので、時間的な経過を見なければならない。
  • 将来的に4.38ドルの見返りが実際に生じるかはこれからとなる。
  • まずは運営側に図書館の存在価値を認識されることが必要。
  • 内部的にも予算増へのこのデータの利用を求める声がある。

という回答でした。
 なお、エルゼビア社の協力により、同様の研究が他の大学においても実施される予定であるとのことです。

 午後の講演は「サービスこそ王様:図書館サービスの戦略的変革と将来」と題して、やはりアーバナ・シャンペーン校図書館のコレクション至上主義からサービス至上主義への転換の試みについてお話しいただきました。
 具体的な転換策として、

  • クラスライブラリアンの採用による学生教育プログラムの構築
  • 情報コモンズの設置による、学生の学習相談及び教員の研究相談への対応
  • 現代の教育環境への適応が不十分である学部図書館の、大学の長期計画としての見直し(具体的には閉館・統合)

等々が紹介されていましたが、これまた本題より、「あの名門図書館にして」利用頻度も低く、単館として存在している意味が薄いと判断された学部図書館を廃止して他学部の図書館に統合するという経営判断を行っている、という点に衝撃を喰らっていました。これ以上驚いていたら、「甘い」と企業経営に詳しい方にはたしなめられてしまいそうですけど。

 ポーラさんの講演以外で直接自分の業務に結びつけられそうに思えたのは、東北大学附属図書館の総務課長の方の発表でした。電子ジャーナルの統計の活用バリエーションを色々指し示していただきました。でもイリノイ大学の発表に比べるとまだ「大学の役に立たない/利用者に必要とされない図書館は潰されても文句は言えない」という切迫感は薄かったです。
 取りあえず、図書館員たるもの、もう少し計量書誌学と、それからMBAは絶対無理としても、研究を円滑に進めるための学術情報の確実なキープとか何も頭になさそうな経営陣に反論できる程度の経営観念位は身に付けた方が良さそうだというのが今回のセミナーを受講してのごく私的な結論です。

 そうそう、我が家にもエルゼビアのうさぎのぬいぐるみさんがやって来ました。昔読んだ漫画「パンク・ポンク」にちょっとだけ似ていると思いました。

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