« 2012年10月 | トップページ | 2013年1月 »

2012年11月

2012.11.26

第14回図書館総合展に行ってきました : 『LRG』感想編

 第14回図書館総合展に参加してきた話は、前の記事でも述べさせていただきましたが、今回楽しみにしていた企画の1つに、図書館専門誌『ライブラリー・リソース・ガイド』の創刊号発売がありました。
 『ライブラリー・リソース・ガイド』(以下、『LRG』とします。)については、次の記事をご参照ください。

2012-11-14(Wed): 「ライブラリー・リソース・ガイド」創刊号、通信販売と会場受取の先行予約、開始のお知らせ | ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) / アカデミック・リソース・ガイド

 発行人、編集責任者のいずれも旧知の方であることもあり、彼らの図書館に関する知見を持っていかなる雑誌に仕上げるのか?という期待を持って待ち望んでいた次第です。 一足先に図書館総合展に出向いた家族が入手してきてくれた『LRG』を、自らが図書館総合展に出向く道中で読み始めました。

 この雑誌についてはたくさん賞めたい点があるので、まずは僅かに「惜しい」と思った点を先に述べさせていただきます。

 まずは雑誌のタイトルについて。どうも出版者側は『ライブラリー・リソース・ガイド』を正規のタイトルとしたかったらしいのですが、所謂日本目録規則(NCR)やNIIのコーディング・マニュアル等のルールに従うと、標題紙及び表紙にでかでかと“LRG”という名称が大きく示されている以上、この雑誌の書誌は『LRG』を主タイトルとして起こさなければならないのでした。ただもちろん『ライブラリー・リソース・ガイド』を並列タイトルとして起こすことは可能なので、出版者側の意図が完全にスルーされるわけではありません。
 また、号数として「創刊号/2012年 秋号」とのみ記されていますが、雑誌として図書館に受入登録することを考えると、できれば数字の号数が付与されていた方が親切であったと思います。

 以下は評価したい点です。

 創刊号ということで、前国立国会図書館長の長尾真先生による特別寄稿「未来の図書館を作るとは」が掲載されていました。
 p.9~48という40pに渡る、専門用語も少なからず使われた内容であるにもかかわらず、脳にすんなりと入り込み溶け込んでくる、不思議な文章でした。
 一見使い古されたかに見える「電子図書館」という言葉を、読者に対して光り輝く未来の可能性として提示し希望へと導いてくれる、貴重な文章でもあると感じました。
 文中で専門用語がさりげなく自然に解説され、解きほぐされているのが、こうした印象を抱くに至った一因であると思われます。良記事です。

 そして、編集責任者の嶋田綾子さんによる特集記事「図書館100連発」。

 こういう「もしかしたらうちの図書館でも真似できるかも知れない」あるいは「既にこんなバリエーションでうちの図書館でも実施している、と手を挙げられる」知恵袋的な企画は結構好きです。
 その昔、雑誌『暮しの手帖』に「エプロンメモ」や「すてきなあなたに」という日常生活を送る上でのちょっとしたアイディアや、話の種になるお洒落な話題についてのコーナーが、連載されていました。今回の一連の記事を読み、ふとこのコーナー記事を思い出しました。
 見慣れた図書館業務の風景の中にさりげなく生かされている知恵を再発見し、採り上げ評価、紹介するというこの企画は、実は図書館業務に相当目が肥えていて、「気づき」の視点を有していないと成り立たない、絶妙な性質のものであると思います。

 ところで、最初に「携帯使用者のために電話ボックスを設置」(file048, p.100)を読んだ時、
「これ、公衆電話機を撤去したボックスをそのままリサイクルしてると思うんだけど、何故そのリサイクル精神に言及しないのかな?」
と思い、著者の方にもその旨ツッコミを入れてしまいました(行動する前に深く考えないのは私の悪い所です)。しかし、よく考えてみたら本文にもあるとおり、
「携帯電話の使用を制限するのではなく、使用できる場所を用意する、という利用者の立場に立った解決策」
を用意していることが最重要点であって、リサイクルかどうかは実際の所どうでも良い点でした。反省。
 なお、100連発の一覧については、図書館総合展1日目(11月20日)に開催された以下のフォーラムのレポートでも紹介されています。

図書館100連発-フツーの図書館にできること | 第14回 図書館総合展

 定価2,500円(税抜)という価格については、世間の「雑誌」全般から見ると相対的には決して安い方ではありません。ただし「学術誌」として捉えると、必ずしも高額ではないと、個人的には考えています。

 『LRG』は、少しずつ、噛んで含めるように図書館の面白さ、そして可能性を味わえる雑誌であるというのが、創刊号の全体的な印象です。2号目にも期待しています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012.11.25

第14回図書館総合展に行ってきました : ブレインテックフォーラム感想編

 突然ですが、この10月から職場が替わりました。担当業務の内容は図書館業務ではないのですが、図書館業務の担当者と同じ事務室で、ウェブ掲載用の原稿作成やら、イベント(サイエンスカフェ等)の下準備やらを黙々とこなしています。

 で、この業務、結構休日出勤の機会が多いです。休日出勤するとその分平日に代休がもらえます。その代休を使って、1日だけ、「第14回図書館総合展」に出向いてまいりました。

 本来この手の展示会には出張で行くのが、他の職員との兼ね合い上は正しい姿勢なのですが、この時期たまたま休日出勤と別件の出張が積み重なっていた上、更にもう1日出張に行っていると代休が取れなくなるというシビアな事情がありまして……。

 というわけで、11月21日、いざ横浜へ。

 元気なら早朝に出発し、午前中のフォーラムから参加したかったのですが、当日はあいにく風邪を引き込んでしまい体調不良に。無理せず、少し遅めに出発することにしました。

 正午少し前に到着、昼食のうどんを啜り込み、事前申込なし、飛び込みで受講することにしたのは、以下のフォーラムです。

ブレインテック ユーザー研究会 第1部(講演)-“ウェブらしさ”から考える、小規模図書館の利用者サービス戦略 | 第14回 図書館総合展

 他に人気フォーラムはたくさんあるし、余裕だろう……と思い込んでいたら、何と事前申込分だけで満席につき、しばらく入場待機。ごめんなさい、ブレインテックと大向さんをなめてました(^_^;)

 詳しい内容は上の公式レポートにまとまっているので、そっちを読んでいただいた方が良いとは思いますが、一応、自分のTwitterのログの抜書を元に、公式レポートも参考にして少し加筆修正した内容も以下に転載しておきます。

「ウェブらしさ」から考える小規模図書館の利用者サービス(大向一輝(NII コンテンツ科学研究系准教授))

自己紹介
 NIIの研究者として勤務。NIIには2つやらなくてはならない事がある。1つは研究。もう1つはNACSIS以来の大学図書館へのサービス。自分は研究側の人間だった筈であるが……。

 最初はCiNiiを使う側だった。画面の殺風景さや使い勝手について不満があり担当部署とディスカッションするうちに「お前がやれ」となり、担当室のトップに祭り上げられてしまい逃げられなくなった。

 自分は図書館プロパーの人間ではない。現場を知らない立場だが突然CiNiiをやることに。ユーザの要望など暗闇を探るような気持ちだった。「図書館100連発」が人気のようであるが、すぐ使える事例はそちらを参考にして欲しい。今回は基本的な考え方についてお話しする。

 CiNiiの担当者はたった3人。大学図書館経験者の職員と自分とで担当。そんな少ない人数でもGoogleやYahooといった巨人と戦わなければならないのがウェブである。

 ここで会場に問いかけ。ウェブとの出会いはいつでしたか?/どのように出会いましたか?/ウェブがなければ得られなかった(であろう)経験はありますか?

自著「ウェブらしさを考える本」(2012.4)
 全文をウェブ公開中。電子書籍ではないのであまり親切な作りにはなっていない。本を手に取ることすらなかった人に触れていただけた。ウェブ版のあまりの読みづらさに書籍を購入したひとも(狙い通り)。

「ウェブらしさ」を考える理由
 ウェブはこれまでの常識や直感とはかけ離れた世界。ある人がある目的の為に作ったものであるにもかかわらず今や情報流通の中心地に。ウェブにないもの(論文等)は「存在しない」事にされる。「ない物はあるようにする」ように考え方が変化。

 サー・ティム・バーナーズ・リーの肩書きはCERNの「システムライブラリアン」であった。ウェブはライブラリアンが作ったと言っても過言ではない。

 ウェブサービスの発達はたった20年の出来事。これまでの社会システムが想定していなかった出来事がたくさん起こっているが、それらは忌避すべき出来事ではない。

「ウェブらしさ」本の結論
 オープンさ。他人にゆだねる。時間にゆだねる。つながりを重視。ベストエフォート(どんどん改良して行く)。このような態度が高く評価されがちな世界である。どんなサービスをするにしてもこのような態度を見せていく事が成功の秘訣。

CiNiiの現状認識(2006)
 ポータルの寡占化(YahooやGoogle、MS)。そんな時Google Scholarからのメタデータ提供依頼が。NII内部では反対意見が。大学へのサービスをきちんと、という意見が大勢。しかし「その状況をどう生かすか?」

 何故Googleからの依頼を拒絶するのか?ユーザが見たいものはコンテンツ。検索エンジンに対しいかに使いやすくするか?いかにGoogleでCiNiiが引っ掛かりやすくするか?が重要であると主張した。

 「アリ地獄戦略」で所属先を説き伏せ、CiNiiのオープン化を実現(2006)。書誌ページの全面開放、Google Scholarと連携、Yahoo論文検索とも連携。

CiNiiのオープン化
 ウェブAPIの提供、ウェブAPIコンテストの実施。NII自身で作るだけでなく、外部の技術者の活躍。志望校検索システムなど思いもよらない活用も。「論文ったー」はTwitterで流れた言葉でCiNiiを検索。

CiNiiのデザイン
 トップページは1つしかないのでどうでも良い。検索結果ページも1つのみ。

 これに対し、論文詳細ページは15,000,000あるので、こちらに注力すべきと考えた。論文詳細ページは一期一会が起こる場所である。行動の起点としての検索ボックスに着目した。論文詳細ページのデザインは、1ピクセル単位迄拘った。

CiNiiのマクロ指標
 総アクセス2000万。うちトップページへのアクセスは6%のみ。検索エンジンからのトラフィックが75%。狙い通り。

新たなユーザも
 親御さんが珍しい病気にかかり、著者を検索して専門医をたどった例。これは後に著者検索機能の追加に繋がった。

改善・改善
 2011年11月からの機能改善に関するお知らせは14回(Booksを含む)。細かいアップデートは他に30回は軽く行われている。継続アップデートを行うにはまず体制作り。いかにチェックなどを早く回すか。「ベストエフォート」のスタッフへの浸透。

ベストエフォート=「できるだけ努力する」
 やってから反応に応じて変えて行く。リリースして反応を見る。もちろんフルリニューアルはニュースになり易いが、1個ずつ細かくリリースしてシステムを良くして行くのが大事。

 今後は図書館のみなさんとのコミュニケーションが課題。

ソーシャルメディアへの対応
 Twitterアカウントを開設。カーリルには負けているが約7000フォロワー獲得。お知らせ・ニュースのためではなくユーザの声を聞くための手段として活用。

 Twitterからフィードバックを得るために情報を出す。CiNiiには「現場」が見えない故のやり方。先日CiNiiが長時間ダウンした時には連絡ツールとして活用。

 またユーザは「CiNiiは人間が作っている」とは思っていない。意見をフィードバックする姿勢を持っている事を伝える手段としてもTwitterを活用している。

 「mixi疲れ」は起こさないようにする。スルー力も育てる。

 ソーシャルメディアからのトラフィックは検索エンジンの次に大事。文献情報の引用のされ方も意識する必要がある。

 インプレッション(接触回数)×コンバージョン(取引まで行き着いた割合)でサービスを評価する。図書館は本質的にコンバージョンの高いサービス。その反面インプレッションに対する意識が希薄。

個人的な事例
 関連分野の本は口コミで買う。Amazonからは1クリックで購入できるプログラムを作成
>つい本を買いすぎた!
>ところが図書室に行けば欲しい本がある!
>図書室に行く回数が増えた。

 インプレッション=お節介。図書館サービスの動線に割り込んで行く。

まとめ
 アテンションを捕まえる。
 人々の時間をありとあらゆる人達が奪い合っている中で捕まえる。
 変わっていくものに対する興味。
 小さな更新がいかに何度も行われているか?声が届いた時の喜び。
 サービスする側としては「人に伝えたい」事への思いが凄く強い。

(以上)

 進行役のブレインテック関さんによれば、11月26日以降に大向さんの講演スライドを弊社サイトにて公開予定とのことでした。

 印象に残った言葉は、やはり「ベストエフォート」でしょうか。

 システムの品質を保っていくには、スタッフのモチベーションとチームワークが保たれている必要があると経験的に認識しています。
 講演でも触れられていたように、ソーシャルメディアの活用によって、CiNiiを作って運用しているスタッフの存在が可視化されると同時に、ユーザという存在及び彼らの声もまた可視化されているわけで、これらユーザからのフィードバックがスタッフに与える力は決して小さくはないと思います。

 今年11月初頭のCiNiiの不慮のトラブルによる長時間ダウンの際、こんなにもCiNiiは幅広く利用されていたのか!と、以下のTogetter(Twitterまとめサイト)を見て体感することができました。

#がんばれCiNii #がんばれNII #祝CiNii復活

 自分はとにかく天の邪鬼な人間なので、こういう時なかなか素直に「頑張れ」と言えないのですが、あの時は早期の回復を静かに祈っていました。全くの余談ですが実はCiNiiが停止していた丁度そのタイミングで、自身が以前担当していたシステムも、電源供給トラブルが起きた影響で故障してしまい、二重に祈る羽目になっていたという(^_^;)。

 多数のユーザの、まあ、たまにはネガティブな声もあるとは思いますが、便利に使っていますよ!という声、そして、API経由で連携しているいくつかのサービス利用者の声が、形になって伝わるのはとても大事なことですし、それをキャッチしてくれる耳をNII側が持ってくれているのはとてもありがたいことです。改めて言わせていただきます。頑張れCiNiiの中の人達!

 ちなみに今回の記事は「ブレインテックフォーラム感想編」です。図書館総合展については後日もう少しだけ続きを書かせていただこうかと考えています。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2012年10月 | トップページ | 2013年1月 »