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2004.08.18

『現代の図書館』vol.42 no.1

 『現代の図書館』の42巻1号(2004.3) p.3-30に、

  土屋俊. 学術情報流通の最新の動向:学術雑誌価格と電子ジャーナルの悩ましい将来

という記事が掲載されていました。ページ数が多かったので読み終わるのに時間がかかりましたが、オンライン・ジャーナルの動向を中心とする過去の歴史および現状についてわかりやすく解説されています。
 特に、学術雑誌の価格高騰に端を発する「シリアルズ・クライシス」について、1990年代から予兆がありながら日本国内での抜本的な取り組み(主に国の予算措置)が遅れたという指摘には大きくうなずかされました。また、SPARC運動やオープン・アクセス、機関リポジトリについても、なぜ、どのような理屈からそのような運動が発生するに至ったのかに関する懇切丁寧な説明にページが割かれています。オープン・アクセスにおいて純粋に投稿料だけで雑誌の発行を維持していくことは非常に困難であり、予算援助が不可欠であること。しかし、日本の場合は科研費補助金の枠組みの中で冊子体の学術雑誌の刊行助成が既に行われているため、これ以上の予算援助は難しいであろうことなどのハードな現状についても余さず記述されていました。
 大変勉強になり、また今後の資料としても大いに活用できそうな記事でした。しかしなぜ『現代の図書館』の掲載記事には抄録がないのでしょう。あまり文章を読むのが早くないのも一因でしょうが、一気に通読するにはちょっと大部にすぎたので、せめて『図書館雑誌』本誌に何回かに分けて連載してあれば・・・などと思ってしまいました。でもたぶん本誌にこの種のテーマの記事の居場所を見つけることは難しそうなので、やはり媒体も掲載方式も今回のようなやり方がベストなのかもしれません。

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