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2005.06.26

パスファインダー(Pathfinder)を考えてみる

山中湖情報創造館のブログで取り上げられていた「パスファインダー(Pathfinder)」が気になっています。英語の“pathfinder”という語が直接意味するのは「開拓者」「(ある分野の)草分け」「先導機」とか「道しるべ」といったものだそうですが、図書館におけるパスファインダーとは、

「あるテーマについての資料群を一覧にしたもの」
「特定のトピックや主題に関する資料・情報を収集する際に、図書館の提供できる関連資料のリスト」

を意味するということです。わかりやすい例としては、

愛知淑徳大学附属図書館のパスファインダー
や、図書館雑記&日記兼用の110kAさんが上記記事のコメントで紹介されていた、
Pathfinder Bank(私立大学図書館協会)

などがあります。

さて、もしこのパスファインダーを自分の仕事に適用するならどんな場合か?と考えてみました。

我が館は組織の広報窓口も兼ねているため、よく一般のお客様やマスコミの方から、我が職場で研究素材として取り扱っているとある生物(植物)についての問い合わせをいただきます。例えばその植物の成分や栄養価、はたまたその植物はどうやって育てたら良いのか?などなど。
 一般的な事項については、一般の方はともかく、文章を書くのがお仕事である筈のマスコミの方には、
 まず、そこの図書館に行って事典を調べてきなさい。こちらに尋ねるのはそれからです。
と言いたくなることが多々あります。そうした問い合わせについてはきっとパスファインダーの存在が極めて有効になることでしょう。質問者にとっても、そして図書館員のあんちょことしても便利に使えることと思います。

問題は非常にマニアック、と言いますか深い専門的知識に根ざした回答を必要とする問い合わせを受けた場合です。
 特に研究に関する質問については注意が必要でして、一般の方向けにわかりやすい語彙を使用して記された、しかも最新の研究成果を反映した資料というのは意外に少ないのです。また、うっかり図書館の古い蔵書を参照すると、最新の研究成果と逆の定説が堂々と載っていたりするので、蔵書に全面的に頼るわけにはいきません。そんなわけで、
「この分野についてはあの研究者に訊け」
とばかりに、質問を受けた職員がその研究者の元に直参して模範解答を取りまとめたり、あるいは研究者の了承を受けた上で居室の連絡先を質問者にお伝えして、
「こちらの者と直接お話を」
で解決してしまうことがしばしばあります。
 たぶん、そういう場合に備えて我が館に必要なのは、

「情報源となる人物のパスファインダー」

でしょう。ただ、そうした情報を一般向けに公開するのは、個人情報保護の点で引っかかりそうですし、また、「それじゃ広報窓口は何のためにあるのか?」という問題になってしまうので、残念ながらあくまで内部業務用のパスファインダーになってしまうと思います。
 ということで、もし我が館でパスファインダーを公開するなら、やはり他館でも実施しているような以下のリストになりそうです。

  • 図書館の蔵書で有用なもの
  • 一般からも利用できるデータベースで有用な情報が得られるもの
  • 有用な情報が提供されているウェブサイト

これらを満たした上で、最新情報を常に反映させる作業というのが必要になることでしょう。また、図書館員の経験上「有用」と感じたツールと専門家がそう考えるツールとは微妙に異なると思われるので、専門家や上司のチェックも欠かせなさそうです。そもそも一図書館員がこういう組織の公式見解とも取れる情報をノーチェックで公開して良いのか?とか言う人は絶対存在しますので、そうした意見への対策でもあります。(そうしたしがらみが多すぎてもう・・・)

※ここからは全く余談になりますので読み飛ばしていただいて構いません。

図書館員個人としては、一歩間違うとゴミになりかねない情報(例.研究成果を引用した健康食品のウェブサイトなど)についても周辺知識として集めておきたい、と思ってしまうのですが、そうした情報は表に出す情報とは厳密に区別しなければなりません。

 

実際に、
「研究者がきちんと把握できていないような、そうした不確かな情報は要らない」
と身内の職員から言われたことがあります。小心者なのでその時は黙ってしまいましたが、今度同じことを言われたなら、
「組織の公式発表情報がこういう風に引用されている事例もあるし、また、他の機関で違う視点で試験されている事例もあるのだから決して無意味な情報ではない筈。王道の情報とは別にそうした情報をストックしておく懐の深さも欲しい」
と反論してみよう、と考えています。

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コメント

ご存知とはおもいますが、かつてテッド・ネルソンという方による『ザナドゥ』というシステムが考案されました(一部分実現したらしいのですが...)。その後、インターネットの登場、HTMLによるハイパーテキスト構造が登場し、日の目を見る事はなくなりましたが、その『ザナドゥ』ではドキュメントの引用(著作権利用の追跡)ができるようなシステムだったと聞いております。

パスファインダーのココログ検索からやってきました。…え、いったいこれ誰って思っていたら、なーんだMIZUKIさんじゃないですか(笑)。おひさしぶりです。

パスファインダーと、ブックリストはどう違うんじゃい!というところから始まって、え、どうやら違うらしいよ…ということで、私が顔を出している勉強会で、やってみようじゃんという話になりました。確かにあれば役に立つ。絶対にそういう資料だと思うんですが。
ひとつだけ不安なのは、このパスファインダーを作るってこと自体が図書館員の自己満足になりやしないか…っていうことですかねぇ。

私は地震(以前もそうですが)以来、何にも勉強していないすっからかんの図書館員。とりあえず、少し、勉強しようと思っているんですが。

すみません、『ザナドゥ』と言うとパソコンゲームしか連想できなかった人間です(汗)。(でもゲームはやったことがなかったりします)
調べてみて初めて、ネルソン氏が40年も昔にハイパーテキストという概念を最初に考え出し、その理論に基づいて『ザナドゥ(Xanadu)』というシステム作りを試みた方だったと知りました。何故XanaduとWWWが全く別々に育ち、WWWが大発展したのか知りたいところです。

>かんちゃん
ご無沙汰しています。新しいブログも毎日読ませていただき、共感したり、時に一緒に憤ったりしております。

>ひとつだけ不安なのは、このパスファインダーを
>作るってこと自体が図書館員の自己満足に
>なりやしないか…っていうことですかねぇ。

それは確かに怖いです。図書館員以外が実際に使って役に立たなければ意味がないわけで。
事前にテストできるのが一番ですが、公開してから利用者の反応を拾いながら随時内容をメンテナンスする作業は必須になりそうです。作りっぱなしで、例えば担当者が替わるとまるきり放置されるなどの事態は避けたいですね。

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