検索エンジンと図書館
少し前から、GoogleやYahoo!の検索ボックスに「"Find in a Library" keyword site:worldcatlibraries.org」と入力するだけで、OCLCのWorldCatに収録されている書誌データや所蔵データを検索することができるようになっていると知りました。
例えば上記の検索エンジンの検索ボックスに「"Find in a Library" snoopy site:worldcatlibraries.org」と入れた場合の結果はこんな感じです。
Yahoo!検索 - "Find in a Library" snoopy site:worldcatlibraries.org
"Find in a Library" snoopy site:worldcatlibraries.org - Google 検索
(2005.11.6注:“site:worldcatlibraries.org”を入れるようにリンクを修正しました)
便利になったなあ、よし、来週から仕事に活用しよう、と感心する一方で、世間の人たちは検索エンジンさえ使って解決できればそれで満足なんだと思うと複雑な気分です。職業的に情報検索を扱っていない人たちにとっては、GoogleさんやYahoo!さんさえあれば図書館ごとのOPACなんて要らないのでしょうし、ましてやキーワードを演算子(and/or/notなど)を使って組み合わせることのできる詳細な検索オプションなんて、例えば「伊東家の食卓」の裏技のように「知っていると便利」ぐらいにしか思われないのでしょう。
検索エンジンの発展に伴い、これからのライブラリアンは情報のナビゲーター、コーディネーター、あるいはコンセルジュであれ、と言われています。そして、本以外にもとりえのある図書館を作り上げるためにがんばっているライブラリアンもたくさんいます。
しかし、営利企業(含む私立大学)の場合、昔から予算削減はまず図書館あるいはそれに類する部門に及ぶのが通例です(他の部門に及んでいないと言うつもりはありませんが)。
そして最近ではお役所(特に国の)もそうです。最もアウトソーシングが容易と思われる会計処理や窓口業務については、今そこで働いている正規職員の権利を守るために手つかずとなり、図書館部門や情報処理部門に減員やアウトソーシングが求められています。お役所や独立行政法人は税金泥棒、とマスコミは言いますが、その税金の使い道を一律に減らすことで、図書館部門のサービスが旧態依然のまま停滞するかもしれない、ということに思いをいたしたことはあるのでしょうか。お金じゃない、ハートだ、という考え方もあるかもしれませんが、元手がないとできないサービスの方が多いです。
と、こういうことを言うと、「上に訴えかければいいじゃないか」とおっしゃる方もいらっしゃると思います。しかし図書館部門と上位部局との中間に位置する部門は往々にして、自分たちの部門さえ守れれば良く、図書館部門ががんばっても自分たちには何の得もないと考えているために、図書館部門を切り捨てることに抵抗がなかったりするのでした。困ったものです。
というわけで、ここでうんと話を巻き戻しますと、検索エンジンがどんどん便利になることにより、世間に「調べ物をするには検索エンジンさえあれば良い」という安易な人が増えるのではないかという危機感があります。実際には図書館同士のネットワークあってのWorldCatであり、従って検索エンジンから書誌情報を入手するという行為も図書館がなければ成立し得ないわけですが、一般的には図書館の存在というのはますます意識されなくなりそうです。
そうした社会状況下で、図書館が、図書館という場所を意識しない(来館者だけをターゲットとしない)情報提供サービスを行う必要性は高まっています。しかし、図書館の存在が陰に隠れるということは、図書館の存在感が「どうでもよくなる」ことにもつながりかねないわけで・・・。やっぱり、サービスを開始する時に「うちがやってるぜー!」と強く訴えまくるしかないんでしょうか。某文科省系研究機関のように(^^;)。
そのように図書館のカゲが薄くなる危険性を孕んではいるけれど、やっぱりこれからの図書館はそうしたサービスの充実で打って出ないといけないなあ、と考えます。そして、サービスに必要なお金や人が削られないために、無駄かも知れませんが、少しでも上位組織の方たちの行動に影響を及ぼす言葉で訴えられるような努力も続けて行かなくてはならないのでしょう。
とりあえず、こんなところで吠えているばかりの自分にできることとしては、日々出てくる新しい知識については惜しみなく身につけていく努力をしたいものです。今後激変すると想定される環境下で図書館を生き延びさせるために、どんな知識が役に立つかわかりませんから。
(10/29 16:42 言い回しの言葉足らずだった部分を手直ししました。)
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コメント
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図書館のアウトソーシング&人減らし問題、身につまされながら読んでいました。諸事情あって、今の段階では自分のブログには書けないのですが、「図書館側の論理」と「それ以外の部署の論理」が噛み合わないと感じることが多い最近です。
「闇雲な定員削減をしたら、図書館サービスが旧態依然としたままになりますよ?」と訴えても、「それでコスト削減ができるなら(あるいは組織全体が守れるなら)それでも良い」というのが上層部や「役所の総元締」である某省とか某省の本音なんじゃないかと勘繰ってしまう自分がいます。
「どういう理論武装をすれば、図書館が守れるんだろう?」って、脇で見ていてよく思うんですが、答えは出ないんですよね・・・。
投稿: ムラサキ | 2005.10.30 18:48
>ムラサキさま
コメントありがとうございました。
そちらはそちらできっと大変なことになっているのでしょうね。
>「それでコスト削減ができるなら(あるいは組織全体が守れるなら)それでも良い」
恐らくそういうことなんだろうと私も思います。
長期的将来を考えるより今成果を上げることが大事なのでしょう。
しかも「総元締」の論理なだけに、こちらの論理で簡単にひっくり返すことはできないときています。
もしかして、上から押しつけられる論理に対しこのように抗った、という記録を後世に残すことが今の任務?などと既に後ろ向きなことを考えていたりします。・・・いけません。
投稿: MIZUKI | 2005.10.31 02:25