『暴れん坊本屋さん』
この間の日曜日、
暴れん坊本屋さん 1 / 久世 番子著. 新書館 (2005.10)
を行きつけの書店で購入しました。
この本は、書店員と少女マンガ家の二足のわらじを履く作者さんによる「実体験をもとに構成されたフィクション」エッセイコミック。先週(確か10/2)の朝日新聞の書評欄に出ていて実に面白そうだったので、書店を数ヶ所ハシゴして探し、買ってしまいました。
「レジで書店員さんにカバーをかけてもらう時に見られて恥ずかしい口絵はあらかじめカバー折り返しに差し込んでおく」
「店の隅に人気コミックス全巻が積み上げられている時は、新古書店への転売目的で盗りやすいように用意されているので要注意」
といった書店ウラ豆知識にも含蓄がありますが、図書館屋としてはやはり、同じ本という媒体を扱っている場としての相違点と共通点とに興味を持ちました。
「本屋さんのたのしい一日」のエピソードに見られるように、書店にとって「本」とは版元から取次経由でやってきてお客さんの手元に渡るなり、売れ残れば返品されるなりする(買い切り本は別)、言ってみれば「この場を通過していくもの」「店に直接的利益をもたらすもの」であり、そうした点で図書館とは異なります。しかし、
- 販促のために独自に作家やテーマフェアを組む、手書きPOPを作るなどの作戦を実施する
- 陳列方法を工夫する
- お客のうろ覚え・勘違いを頼りに正しい書名・著者名をたどる
- マナーの悪い客(問題利用者)と戦う
など、来店(来館)者が心地よく滞りなく本を選べる場を整え、商品を積極的に手に取ってもらい、できれば買って(借りて)いただくための苦心談やノウハウには、サービス業として学ぶべき面がかなりあると思いました。
・・・と、真面目に書いてみましたが、この作品、連載誌が『ウィングス』等のマニア向け少女マンガ誌なので、ほどほどに散りばめられたBL(British LibraryではなくBoys Love)ネタやその他のオタク臭のするネタが楽しいです。BL好きの店員さんが自分の好みをねじ曲げ客層に合わせて組んだはずのBLフェアが―のエピソードは泣けます。
そうした意味で、個人的には第11刷(注.話数)の「抜いては入れて」がツボでした。職場できつきつの書架から本を出し入れする時に、あの無意味なインサートカットを脳裏に浮かべながら口ずさんでしまいそうです。
最後に告白しますと、朝日の書評でも引用されていた「新聞に載ってたアレないか?」を、書店員さんの前で口には出さなかったものの筆者もやってしまいました(^^;)。書店の平台で現物を見つけたその時までとうとう正確な書名を思い出すことはできませんでした。番子先生ごめんなさい。
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