事実は覆せないのですが・・・。
昨日、とある遺伝子性代謝異常を抱えた幼い患者さんの食事献立を担当されている栄養士さんから、
「ある食材について、その患者が摂取制限されている成分の含有割合が少なく、かつ積極的摂取が推奨されている成分が多く含有されているものを知りたい。その食材の該当成分を一覧できる研究データはないか?」
との問い合わせをいただきました。
うちは図書館ですが、同じ部署内に一般の相談担当窓口も置かれています。こういう研究データについては通常、レファレンス担当者ではなく相談担当者の扱いとなりますが、電話を受けた際たまたま相談担当者が不在だったため、筆者が質問を受け付け、回答を手配することになりました。
データ自体は、その食材の成分に詳しい先生に照会したところすぐに一覧表を譲っていただけたので、依頼を受けて1時間程度で依頼者にお送りすることができました。
しかし、しかしです。そのデータ、依頼者の要求を満たすものではありませんでした。データには、対象になった食材のいずれの種類も、制限すべき成分が少ないものは摂取推奨成分も少なく、逆に推奨成分が多いものは同時に制限すべき成分も多く含まれてしまうという事実が示されていました。
また、生活習慣病など普通の病気であれば、適量なら気にする必要もない成分ですが、遺伝子疾患となるとうちの先生も慎重にならざるを得ません。ましてやうちは医療機関ではありませんし。
何とか幼い患者さんに少しでも豊かな食生活を、という目的でのデータ提供依頼でしたが、別の食材で対処していただくより仕方がなさそうです。
窓口相談の仕事も、図書館の仕事も、「業務の範疇内で、できるだけ正確な、依頼者が『使える』情報を提供する」というのが目的の一つであり、情報の取捨選択の過程で情にほだされるようなことがあってはならない、とはわかっているつもりですが、たまにこういう人の生命の行く末に深く結びつく依頼があるとちくっと来ます。
一般向けの医療情報サイトで見る限り、その代謝異常症の治療は生涯に渡り厳しい食事制限を要するもののようです。せめて患者さんの健やかな成長を願うばかりです。
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