第7回図書館総合展参加レポート
遅くなりましたが、水曜日に第7回図書館総合展に出かけてきました。地域資料デジ研さんや農林水産研究情報センターさんのブース他で数々の既知の方、そして初対面の方などに出会い、お話しし、楽しいひとときを過ごさせていただきました。幾人かの学校の後輩に当たる皆さんにもお会いしたのですが、それぞれに自分など足元にも及ばない頑張りを見せていて、ただ圧倒されるばかり。
ところで展示会場に先だって出向いたのは総合展運営委員会主催フォーラム「Google and Libraries」(Googleと図書館)で、グーグル株式会社の村上社長の講演でした。内容は“Google Book Search”(旧 Google Print)のサービス目標と機能についての解説。村上氏がGoogle Book Searchのゴールとして掲げていたのは、
「著作権を守りながら、すべての言語で、すべての書籍の、包括的で検索できる仮想目録をつくる」
というものでした。
講演の中で印象に残ったのは、「著作権を尊重いたします」「ユーザと新たな図書との出会いの機会を作ります」「存在すら知られることのなかった書籍に発見の機会を与えます」という発言でした。これってつまり、図書館司書の仕事そのもの。出版社の仕事とも通じていますが、異なるのは絶版書や著作権切れ書籍についてもユーザへの提供対象としていること。確かに絶版書の復刊への取り組み(例.復刊ドットコム)や著作権切れ作品のインターネット上への公開(例.青空文庫)など、ユーザのニーズに部分的な取り組みは行われていましたが、これらは言ってみれば出版界のすき間産業であって、全部含んだ大規模なビジネスモデルを展開しようなどというとんでもないことをするのは今のところグーグルぐらいでしょう。ある意味、図書館界と出版界の水と油の部分の融合をビジネス的に実現しようという試みなのだと思います。
ひとつ気になったのは、質疑応答タイムで聴講者のひとりから出た
「日本の図書館界や出版界には公貸権の問題などあるがそのへんは日本でビジネス展開を行う上でどうなのか?」(不正確かも)
という質問に対する、
「そもそも北米でのこのモデルのスタートも出版社向けプログラムであり、図書館への働きかけはその後であった。このため、日本でもまず出版社からと考えて打ち合わせを始めたところ」
という回答でした。確かにGoogle Book Searchには、検索結果表示ページに表示された広告リンククリックにより生じる収入の一部を、結果として表示された書籍の出版社に配分するという仕組みが存在するそうなので、出版社も直接的なうまみを享受することはできるようです。しかし実際質問者が危惧されていたように、日本の出版社、そして作家団体の自分たちの利益にこだわるばかりの最近の姿勢を見るに付け、今回のようなビジネスモデルを成立させるのは難しいんじゃないかという気がしてなりません。別にGoogleシンパではない―むしろ検索エンジンの行ける限り、あらゆるサイトのデータをアーカイビングしていき、最終的にはデータで世界征服できるだろうという畏怖の方が大きい、あ、でもGoogle Doodleは大好きです―のですが、果たしてこれからどうなるのか静かに見守っていきたいと思います。日本の図書館界に対してはオファーの糸口にすらまだたどりつけていない状態のようですし。
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