創作者のプライドと著作権
かなり今更ですが、ここ2週間ほどの間に出てきた、松本零士vs槇原敬之(マッキー)問題とかテルーの唄盗作(?)問題とかについて思ったこと。
どうも追及している側もしくはマスコミの皆さんが、著作権法上の権利と創作者としてのプライドの問題をごっちゃにしてるような気がして仕方がありません。
まず、松本先生の主張(MSN毎日インタラクティブ10月19日記事より)には、何よりも先に創作者のプライド故の傲慢さを感じ取ってしまいました。筆者自身は999のコアな読者・視聴者ではないのであのフレーズは存じませんし、ましてやマッキーが本当に知らなかったのかなどは分かりません。ただ、あのフレーズには無意識に身体に染みこんで来るパワーはあるんだろうな、と思います。とはいえ、松本先生の付けてきた因縁苦情は、その創作者の身体に染みこんだ(かも知れない)ものについて今更「返してくれ」と言っているようなものなので、ちょっと解せません。
この松本vsマッキーの件については、その後大人の和解が進みつつあるようです。松本作品もマッキーの曲も大好きな人間として今回の争いは辛かったので、少し胸をなで下ろしております。
また、友人達とのやりとりの中で、松本先生が以前に某プロデューサー氏のせいで『宇宙戦艦ヤマト』の著作権問題で相当に苦しめられたということも思い出しました(参考:当時(2003年)の東北新社のニュースリリース)。そう言えば某プロデューサー氏もマッキーも過去に同じ罪状で…ということで、一概に松本先生の大人げなさを責めることはできないなあ、と今では思っております。
もう一点のテルーの唄について。最初に見た記事はこちら。
ゲド戦記:挿入歌の歌詞が朔太郎の詩と酷似-今日の話題:MSN毎日インタラクティブ
詩人の荒川洋治さんという方が、月刊『諸君!』の2006年11月号で指摘されたらしいです。原典は未見なのですが、記事の文面から察するに荒川さんが本当に主張したいのは、
「先人の名作にインスパイアされて作るなら作るで、もっと創作者としてひねりのあるものは作れなかったのか?」
ということなんではないかと思いました。そもそも朔太郎の作品は既にパブリック・ドメインになっているのだから、素材として使われること自体には著作権法上の制限はない筈。ですが、もう少し作品としてひねりを効かせるとか、拡がりを出すとか、何とかならなかったの?あなたには創作者としてのプライドはないの?大ジブリの作品なら何をやっても許されるの?と言う嘆かわしい気持ちの発露の結果が今回の荒川さんの記事なのであれば、大変良く理解できます。
だから、今回のテルーの唄問題について「著作権問題に詳しい日本文芸家協会副理事長、三田誠広さん」にコメントされると非常に腹立たしかったりします。何故あなたがこの問題を語る?みたいな。それはもしかしたら筆者の三田さんに対する個人的感情かも知れませんが(笑)。コメント中では「盗作とは言い難い」「モラルの問題として、朔太郎への感謝の言葉を入れるべきだ」「先行する芸術への尊敬の気持ちが欠けている」という正論を一応吐かれていらっしゃいますので。
――で、その後この問題に関してジブリ側が出したコメントがこちら。
スタジオジブリ - STUDIO GHIBLI - 「テルーの唄」の歌詞の表記の問題について
これまでの事務面・広報面での対応に特に問題があったわけではなさそうですが、何だか創作者の尻ぬぐい的印象が否めないのはどうしたものかと思います。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
お久しぶりです。最近気になってた記事のことが書いてあったので思わず書かせていただきます。
ジブリのゲド戦記は未見ですが、以前にどっかの店のBGMで「こころをなににたとえよう~」という歌詞の歌を聴いて「朔太郎の詩を現代語訳したんだな。今こんな歌がはやってるのかぁ。」と思ったことがあったのですが。
その後、件の詩人の方の指摘の文章を読んだときの正直な感想が「なにぃ!?自分の作詞として発表してたのかぁ?!」でした。
そして今、ジブリ側のコメントの「テルーの唄誕生の経緯」を読んでまたちょっと呆れてました。「そしてなんと、その翌日~(中略)~詞を完成させたのです。」……そりゃぁそんなに時間かかんないでしょうとも。
古典的な作品は後続のいろんな作品のベースになるもんだから、似ているからといって一概に「盗作」とはいえないと思いますが、「先人の名作にインスパイアされて作るなら作るで、もっと創作者としてひねりのあるものは~~大変良く理解できます」というMIZUKIさんのご意見に共感します。
投稿: 幾狭 匠 | 2006.10.29 18:51
こちらこそお久しぶりです。
私もジブリゲドは未見ですが、原作者に嘆きコメントを出させる程の出来なんて、めったにあるものではありません。もし「名作」として評価されていたならここまで挿入歌がボロカスに言われなかったのかも知れないなあ、と思います。
先人の作品に想を得た場合は必ず謝辞を入れなければならない、なんていうルールはどこにもありませんが、全世界に配給される映画の挿入歌だからこそ、例え荒削りでももっと監督自身の気持ちを込めた言葉で創作していただきたかったです。残念。
投稿: MIZUKI | 2006.10.30 01:37