図書館ブログに見る戦略
先週水曜日の夕方に時間休暇を取って上京し、「マロニエの花咲く 横芝光町立図書館blog」の中の方のお話を伺ってまいりました。
筆者の所属先とは畑違いの公共図書館での実践例ですので、さて、どれだけ参考になるだろうか?という一抹の不安は、演者のユーモアを交えつつ明快な語り口もあって講演開始後にすぐ吹き飛びました。
職員体制が小規模な図書館(これは多くの専門図書館でも共通なところです)でも機動的かつ臨機応変に情報発信を行っていくためのツールとしてブログに着目し、使いこなしていくためのノウハウももちろん勉強になったのですが、最も目から鱗が落ちたのは次のお話でした。
図書館の構成要素である「建物(空間)」「資料」「人」(竹内紀吉氏の言によるそうです)のうち、「人(司書)」はお客にとって用もないのに近寄ってくる鬱陶しい存在に過ぎず、家電量販店の店員のようにお客が商品説明を求めた時や価格交渉の時だけ声をかけてくれれば良いと思われているのではないか?実は図書館は「物流(本)」にしか期待されていないのではないか?というたとえ話から、これからの図書館は資料の現物だけでなく情報の発信も行うことにより、それを実践する司書の認知度を高めて重要性をアピールしていくべきであり、その一手段としてブログを活用している、というのがそのお話です。ブログはつい「便利なツール」として使ってしまいがちなのですが、ただ便利に使うばかりでなくいかに戦略的に利用していくかを念頭に置いて進めていくという発想がとても新鮮に思えました。
また、公共図書館においてはよく、来館者数や貸出冊数の増加が目標としてあげられ、時に活動の中身より数値が一人歩きしてしまうことでやり玉に挙げられたりもします。横芝光町立図書館では決してそれらは目標としておらず、むしろ情報収集・発信という最も数値にするのが難しい部分に力を入れているように見えますが、レジュメに添付された参考資料に掲載の同館の利用統計表を見ると、来館者数や貸出冊数は着々と増加の一途を辿っています。情報の「収集」と「発信」を継続して積み重ねていくことは、言うは易く行うは難しなのですが、それらを司書が楽しみつつ(これが重要)きちんと実践していくことがやはり物を言うのだと、改めて肝に銘じさせられました。
利用者層も収集資料も異なる館種の人間としては、今回の講演をそっくりそのまま真似っこすることは出来ませんし、また、図書館組織は小さいですが親組織があまりに大きいことなどが災いして、ブログを即座に取り入れられる立場にもありません。それでも、制約の中で利用者の要望を取り入れつつ、同時に図書館の存在意義も満たしていくということにチャレンジしていくのも、大変だけどそうつまらないことでもなさそうだな、と今回の講演を聴いてから思えるようになりました。
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