ある図書館のナノピコ戦争
※ちょっと思うところあって、今回の記事は普段と語調を変えてお送りします。
モデルについてどこかを連想する人もいるかも知れませんが、そこはスルー希望。
とある図書館。これまである業界内でそこそこ定評のあるサービスを提供して、決して多いとは言えないけれど利用者もついてそこそこやってきた。ただ、最近の公的予算で運営されている図書館の例外に洩れず、所属組織内でその存在意義を問われている真っ最中である。業界への貢献が「そこそこ」であることが災いして、決め手がないのが苦しかったりする。ところがこの図書館、上の人と下の人との意見調整のバランスがどこか崩れていて、下の意見は上に伝わらないわ、上の人が更に上位から受け取ってきた意見は下に伝わらないわで、皆の方向性がバラバラになっているらしい。
その図書館の人で、地道……かどうかは分からないけれど、アイディアを武器に図書館の外部で話をしたりとか、寄稿したりとかの活動をやってきた人がいる。その活動は、本人にしてみれば単純な功名心ではなく、どうしても弱小な自館の活動を外に認めてもらいたいという意向が働いたものである。ただ、ちょっとした持病があって、身体もあまり丈夫ではないので、少し遠出したりするとものすごく負担になって寝込んでしまったりするという問題を抱えている。また、外部で仕事をすることにより、現在の内部の仕事とは必ずしも直接には結びつかないプロジェクトへの参加なんてのも出てきたりしている。
で、その人に、どうやら最近来た上司の1人が目を付けたらしく、
「外向けの活動が多すぎる」
という注意があったらしい。
しかし、部下は自分の外向き活動が増えていることはこれまで自覚しており、これまで外部向けの仕事をする都度、言われた相手を含む複数いる上司に自分の活動ポリシーを伝えて了解を取り付けてきたし、外で話す内容については上司にその都度チェックを求めてきたので、何故今更、と理解できず、問い質したところ、
「これまで外向けに発表してきたものがそんなに高い質とは思えない」
「夢見てるぐらいなら、仕事で悩んでいる人もいる中を見てほしい」
「たびたび休むことで迷惑をかけている人がいる」
等の言葉が返ってきたという。部下は、努力してきたのに自分のポリシーが強硬に受け入れられなかったと激しいショックを受け、未だに立ち直れないでいるとのことである。
その上司は多分、自分に対しても人に対しても等しく厳しい人で、自分の思うところを明確に告げただけなのだと思う。言っていることも恐らくは正論で間違ってはいない。部下がそれまでお伺いを立てていたとしても、つもり積もってこんなに周囲および本人自身への負担がかかっているようではダメだ、と考えただけかも知れないし、また、その部下のこれまでの経験の蓄積を、半端に外部に向けるよりはもっと内部に活かしてほしい、と憂えただけなのかも知れない。
ただ、「間違っていない」というのは、矛盾しているようだが100%正しい、ということではない。それは上司だけでなく部下の側にも言えることである。
きっと、その上司が今まで生きてきた、事務屋ではない研究畑の世界では、お互いに相手の一番弱いところを厳しく突くことで切磋琢磨するのが当たり前だったので、部下の甘い部分が我慢できなかったのかも知れない。もちろん、その厳しさを理解して、受け入れる、あるいは耐えることで付いていける人もきちんと存在する筈である。ただ、このケースに限っては相手を間違えたとしか思えない。弱いところを突かれるとどこまでも落ちていく相手だっているのだ。それはライバルに対してなされるべき行為であって、決して部下に対してなすべき行為ではない。人心のつかみ方を間違えたんだろうな、と思う。とは言え、遍く人心をつかもうとかそういうことは考えていないだろうし、いちいち考えていたら説教なんてやっていられないだろう。
繰り返すが、やっていることが間違っているわけではない。ただ、もう少し(かなり控えめな表現)さじ加減は覚えた方が良いと思う。本人の意思が「指導」であったとしても、相手によってはただの「糾弾」と受け止められることがあるのだと理解すべき。厳しいだけの、相手の心を汲み取らない指導では人は付いてこないのである。
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