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2007.08.11

農学雑誌の四天王(挫折編)

 ご無沙汰しております。また本業多忙&趣味充実につきこちらの更新が出来ておりませんでした。ということで、たまには書いておくことにします。

 先日、奈良県立医科大学附属図書館のブログ「ないとブログ: 医学雑誌の四天王!?」に、「英文医学雑誌の四天王」というのが載っておりました。じゃあ、「英文農学雑誌の四天王」なんてのは果たして存在するのか?と疑問を持ち、乏しい頭で思いつく限りをピックアップしてみたところ、

  • Agronomy journal(ISSN: 00021962)
  • Journal of agricultural science(ISSN: 00218596)
  • Crop science(ISSN: 0011183X)
  • Journal of agriculture and food chemistry(ISSN: 00218561)
  • Theoretical and applied genetics(ISSN: 00405752)

この時点で既に5つ出てきてしまいました(笑)。

 しかし、これらはあくまで農学分野において比較的共通に需要の高いジャーナルであって、研究者の専門分野によっては異論が出ると思われます。例えばTheoretical and applied genetics(TAG)なんて、獣医学の研究者にとっては縁は薄いです。むしろ、獣医学関係や畜産学、動物学、それにウイルス学とか病理学関係のジャーナルの方が利用されるでしょう。また、食品工学系の研究者の場合は、化学分野や医学分野の論文を必要としていたりもします。そういう人達に向かって「これが農学の代表雑誌だ」と4、5誌程度を示しても、多分「だからどうした、我々には用がない」と言われてしまうことでしょう。

 ちなみに、手近なところでJCRの集計対象分野の中から農学に関連するもの(と、林学、水産学がらみ)を拾ってみると、これだけ出てきます。

  • Agricultural Economics & Policy
  • Agricultural Engineering
  • Agriculture, Dairy & Animal Science
  • Agriculture, Multidisciplinary
  • Agronomy
  • Biochemical Research Methods
  • Biochemistry & Molecular Biology
  • Biotechnology & Applied Microbiology
  • Cell Biology
  • Fisheries
  • Food Science & Technology
  • Forestry
  • Genetics & Heredity
  • Horticulture
  • Microbiology
  • Mycology
  • Plant Sciences
  • Soil Science
  • Virology
  • Zoology

 ……「四天王」に絞り込むの、絶対無理です。
 前出のように化学分野や医学分野も無視できませんし、自分の分野拾い出しが完全である自信もありませんが、これらの分野からインパクトファクター上位のタイトルを拾い出せば百天王(何だそれは)位にはなるかも?と一瞬だけ考えました。

 でも、以前、トムソンの方を講師として、JCRを使って2ステップマップを作るというセミナー実習を受けたことがあるのですが、その時に分かったのは、ある雑誌のインパクトファクターが高いことと、その雑誌がとある分野においてコアジャーナルであるか否かは必ずしも一致しなかったということです。インパクトファクターだけで雑誌の価値は計れない、という慣用句について身をもって理解した瞬間でした。

 というわけで、実際に本気出して「農学雑誌百天王(あるいは百大誌)」をピックアップするというのは結構大変な作業だと思います。
 とは言え、個々の図書館が購入雑誌(含むEJ)の重要度を判断する必要に迫られた場合には、そのくらいのデータが示せないと本当はまずいんでしょうけれどね。ちょっと今は根性がありません。

 以下は余談。上述のセミナーの後、内輪の団体誌に受講報告を載せる為に2ステップマップの習作を作り直したことがありますが、たかだか20タイトル程度のマップでもめちゃくちゃ苦しみました……マップ作成そのものよりも分析の方に。マップ作成自体はとても楽しかったですよ。セミナーでも言ってましたがソフトで描くならVisioがお勧めです。

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図書館」カテゴリの記事

コメント

今頃コメントしてみます。
そもそも医学系四天王の四誌って,医学系でも全般(または内科)の雑誌だけなので,関連分野すべてを考える必要はないはず。医学系でもこの四誌をほとんど必要としない先生方もいるようです。
同様に農学系全般を扱ってる分野としてはAGRONOMYとAGRICULTURE, MULTIDISCIPLINARY(MULTIDISCIPLINARY とあるけど実質的には「一般」ぐらいの意味)がおそらく適当。

また,医学系四天王の四誌は,NEJM・LANCET・JAMAは実際IFも最上位なんですが,BMJは6位だったりします(まあ週刊誌ですし)。むしろこの四誌が高いのは総引用数。こちらは文句なくベスト4。(実際は各誌の歴史なんかも加味した評価だと思いますが)

なので,農学雑誌の四天王を出すのなら,上記のカテゴリで総引用数の高い雑誌。たとえば以下の6誌あたりから選ぶのが適当かなと。

JOURNAL OF AGRICULTURAL AND FOOD CHEMISTRY (0021-8561) 32470回(JCR2006よりTotalCites。以下同じ)
THEORETICAL AND APPLIED GENETICS (0040-5752) 13205回
PLANT AND SOIL (0032-079X) 10994回
CROP SCIENCE (0011-183X) 9127回
JOURNAL OF THE SCIENCE OF FOOD AND AGRICULTURE (0022-5142) 6955回
AGRONOMY JOURNAL (0002-1962) 6723回

記事にあるリストとあまり変わりませんねw
ちなみに医学系四天王だと総引用数10数万とかだったりするので,やはり分野毎の引用量の違いって大きいなあとつくづく感じます。

コメントありがとうございます。
農学系ジャーナルの分野について、個人的には、せめてAgronomy+頭にAgricultureのついている分野全部ぐらいはカバーしておきたいところですが、おっしゃるとおり、どこかで妥協して普遍化、一般化させないと切りがなさそうです。

私のリストは経験上どこの農学系図書館でも備えているであろう代表的タイトルを、ほとんど勘だけで記したものなのですが、総引用数上位のリストとも3分の2は合致していたようでほっとしております(^^;)。

引用数というのは実際重要だと思います。
記事で言及させていただいた2ステップマップも、各雑誌同士の引用関係とIF値とを組み合わせて相関図にしたものです。複数のデータを組み合わせて図にすることにより、数値だけで見た場合とはまた違うものが見えてきて面白いです。

医学系四天王の総引用数の多さには医学分野の研究のアップデートの頻繁さとか、EJの充実とか、色々な要素があるのでしょうけれど、やはりすごいですね。

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