図書館不要論について
以下の2件のブログエントリを読ませていただいて考えた所を、こんな場末のブログで書いても何にもならないだろう、と思いつつ、書くだけならタダなんで一応だらだらと書いておきます。
公立図書館運営費は医療費にまわそう! - Ceekz Logs
それは、図書館があった方が安くつくからだよ - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
まず、図書館の有料化の問題についての考えは、先日も書いたとおりです。その後、DORAさんのところのエントリを読ませていただいて、折角保障されている権利を、お金の問題にこだわってあえて手放すようなことは止した方が良いと改めて考えた次第です。だから、有料化問題は今回は棚上げしておきます。
図書館不要論について一言だけ申し上げますと、知る権利を生存権と天秤にかけるという考え方はちょっと拙速ではないかと思います。
例えば最近は病院図書館も医師の研究の為だけでなく、患者やその家族が病気について調査し知る為に手助けする試みを行っていたりもします。つまり、知る権利の保障が生存権にもつながる可能性があるということで、そういう意味でも単純に天秤にはかけられなさそうです。
とは言え、そういう本来天秤にかけることに無理があるものをあえてそうするよう仕向けてくるのは政策を実施する上での常套手段です。
ごく私的には、国の政策に対し外野が素直に与して行け行けどんどん、というのは好みではありません。だから、先々代の首相在任時の朝○新聞の、政策に迎合した報道姿勢は大嫌いでした……って、脱線するのは止めておきますが。
※これは国が知る権利と生存権を天秤にかけていると言っているのでは決してありませんので、くれぐれも誤解無きようお願いします。
現状の公立図書館については、そこで働いている司書も含め、要らないと言われてもしようがないレベルの所もあるでしょうし、また、住民のニーズを蔵書貸出のみで十分充足しているからいいじゃないかと思われる所もあるでしょう。上に書いたような病院図書館との橋渡しとか、もっとやっても良いと思うのですけれど(既に実践してる所があったらご容赦)。
公立図書館の人は、政策に「文句」を言うだけでなく、「これだけ実践して、これだけ成果が上がってますよ」って証明する「反論」をいつでも出せるように常に武装しておくのが結果的に吉につながると思うのです。反論してもダメな時はダメなんですけれど、やらないよりはやった方がマシということの方が多いですし。
また、大学図書館、研究図書館の存在意義については、基本的にかたつむりさんに同意です。
研究者のコストパフォーマンスを低下させない為に図書館があるんだ、の件についても、昔からそれを強力な盾として図書館の存在意義を打ち出してきた所は多いと思うし、実際その為に図書館は働いてきたという自負を、職員達は持っているに違いありません。
ただ、どうも公立の研究所はとても内部図書館が充実しているとは言えない所も多いらしいのですが、そういう所でもしっかり研究成果を出してたりするので、そういう意味では盾にも弱点があるかな、と思います。
もっとも、それが本当に弱点なのかどうなのかということについては、ちゃんと統計を取って検証しているわけではないので、弱点とは言い切らないことにします。
あと、今まで折角上手く回ってきた物に対して、予算の使い処が違うだろう、こっちを減らしてもっと違うことに使え、とか言われたりもするわけですが。じゃあ、その違うことって何ですか?ということについて答えを出すのが、現在の大学図書館や研究図書館の課題でもあります。
結局の所、研究者が図書館の役割について「無くてはならない」と言ってくれない限りどうしようもないのですけれど、かたつむりさんでも言及されているように、文献探すのも研究者に求められるスキルの一つになってしまっているし、大抵の研究者は自分が必要な文献さえ入手できれば手段が図書館であろうと何であろうと構わなさそうです。
多くの国立大学で実施されている機関リポジトリ事業は、図書館の存在意義を示す手段としてかなり有効だとは思いますが、一方で、これ以外にも何か研究者に支持していただけるネタを考えておかないと今後生き残りは大変だとも思うのです。
誰かその辺の生き残りネタについて、これまでの図書館の酸いも甘いも熟知した上で、データを集めて研究して論文など書いて提案して牽引してくれる人はいないものでしょうか(と他力本願してみる)。
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» 天秤には掛けられないが、お財布はひとつ。 [丸山高弘の日々是電網 The First.]
以前、「公の施設...がたどる未来」を書いている時にも感じていたが、自治体の財政状況は、僕たちが認識している以上に、深刻なのかもしれない。
年末年始、大阪で立て続けに起こった《救急搬送のたらい回しによる死亡事件》などを考えると、同じお財布から出るお金を、あっちはあっち(福祉や医療)、こっちはこっち(図書館や文化施設)などとは言っていられない状況なのではないだろうか。
そんな中で、昨年末に書かれたブログが気になる。
・公立図書館運営費は医療費にまわそう! Ceekz Logs
もちろ... [続きを読む]
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まずは、今年もよろしくです。
今年はできるかぎり気になるブログにはコメントしようと思います。
年明け早々でしたか、大阪で起きた救急搬送のたらいまわし。
遺族の方からみれば、図書館に回すお金を医療にまわせたら、助けられたのに...などと比較されたら...図書館界はどんな反応をするでしょうか。
自治体に依存したままの公共図書館では、いずれ大阪の「開港ふれあい館」のような運命をたどるのではないか...と、危機感を募らせております。民間委託や指定管理者であっても、運営費全額を公費から捻出していれば、いずれは同じこと。公共図書館といえども、『自立の道』を考えなければ生き残れない時代が来るような予感がします。
投稿: まる3@山中湖 | 2008.01.06 22:09
こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします。
どちらにもしっかりお金を出せるというのが理想なんでしょうけれどね。知る権利と生存権、権利として見た場合に天秤にはかけられませんが、緊急性、逼迫性という観点から見れば予算的に医療対策の方が優先されるのはやむを得ないし、またそうであるべきと思います。だから図書館の予算を減らして良いかと言うとYesとは言い難いのですが。
ふれあい港館についてはニュースで知った限りですが、そもそもこの施設の設置自体、社会資本として適切だったんだろうか?という疑問があります。日本の中でも収支と損得にとりわけ敏感な地域性を有した大阪という場所において、この施設で本当に元を取れると思っていたのかと不思議でなりません。
図書館の場合、これまでのサービスを有料化して良いか?というと、そこは色々な意見があるので結論を出すのは簡単ではありません。ただ、他の公共施設と同列に存廃見直しの対象とされる以上、そもそも何故図書館がそこに必要だったのか?この業務は有料化できるかできないか?無駄遣いしない為にどんな工夫をしているか?等の説明は、運営形態(直営、指定管理者運営、民間業務委託等)の別を問わず常に用意しておく必要があると思います。
投稿: MIZUKI | 2008.01.07 02:48