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2008.06.21

6/18読売のシリアルズ・クライシス記事について(6.21加筆)

 6月18日にYOMIURI ONLINEに掲載されたこちらの記事について。

大学が学術雑誌買えない : ニュース : 教育 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 地方の大学とはいえ、国立大学にしてこの状況なのか、というのは結構インパクトがありました。国立大学は、国立大学図書館協会として出版社と団体交渉が可能だし、教育研究機関として国の補助も受けやすい立場にあるとは思うのだけど、大学による貧富の差というのはどうしようもないのだと実感しています。大体、ジャーナルって1タイトル当たりの年間購読価格は10万円以下のものから数百万円のものまでまちまちだけど、まとめて積み上げた時の契約額が本当に大きくて目立ちまくるので、真っ先に経費削減の槍玉に挙げられてしまう、何て損な製品なんだろう、と思うわけです。
 ということで、シリアルズ・クライシスは全然終わっていません。みんな終わって欲しいと思ってるだろうし、終わったことにしたい気持ちも分かるけど。少なくとも私にとっても全く終わっておりません。というか、ずうっとそれがらみで引きずっている仕事があるのだけど、他の仕事も本当ーーーに色々立て込んでいて、全然進められず辛いのです。こんな所に書いてる暇があったらさっさとやれ、という話もありますが。

 以下、今回の記事に対する、主にはてブ諸氏の反応にマジレスする形で思う所を書いてみます。大学図書館の人間ではないのでピントがずれているかも知れませんし、また、この問題についてもっともっと勉強しないといけないのは承知の上です。

  • 電子ジャーナルに切り替えると契約を打ち切った時全部読めなくなる
    →正確に言えばン万円だかの利用料を払い続ければ、契約中止前の発行巻号は読めるようにしている所が多いです。でも冊子体のように現物ではなくバーチャルな物(アクセス権)しか残らないことへの抵抗感は根強いかと。
  • 「値上がりは、紙媒体と電子媒体の両方を発行することなどで出版社の製作コストが上昇しているのが原因」(元記事より)
    →実は某出版社さんとお話しした時に全く同じ説明を聞いたわけですが。「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」のエントリでも指摘されてるように、それだけが原因とは言えないでしょう。
     上記エントリでも示されているとおり投稿論文が増えて雑誌のページが厚くなったとか、それに物価自体の上昇とか、カラー印刷が増えたというのも原因でしょうし、また、値上がりすることで購読契約が減少して更に高くなると言う悪循環もありますし。
  • 「研究者の個人購読に切り替えた」<研究費から購読料を支出しているのであればそれを図書館に回せば良いのでは。
    →多分この記事で言ってる「個人購読」は私費ではなく公費分のことかと。あくまでうちの職場(非大学)の一例で言うと、研究費から持ってくることが可能な分は既に図書費に持ってきていたりします。しかし、それで多少の値上げ分補填は可能だけど、根本的解決にはなっていません。あと、個人向け購読料の方が図書館向け購読料より安いのが通例。
  • 雑誌の種類が多すぎる(特にNature系)
    →同意。Nature系は毎年雑誌を増やしすぎ。
  • 学術雑誌は教員のアリバイ作りにすぎず、学術的価値はない。
    →そこまで言われてしまう雑誌がどれなのか知りたいです(笑)。どの分野にもコアジャーナルというのがありますが、それ以外の雑誌を指している?
     ただ、あまりしょぼい雑誌ばかりに採用されていると、大学や研究機関の内部評価が……でも、評価が低くても、そこそこ生き延びられすれば良いのか。
  • 紙媒体の雑誌にこだわらず、横断的な記事データベースだけ国で一括購読すれば良いのでは?
    →全国区のマルチサイトオンライン契約で大幅割引してくれるフルテキストデータベースがあれば教えていただきたいです。
     あと、購読契約を行う主体である「国」というのは具体的にどこを想定されているのか?文科省をはじめとする省庁が、建前上は法人化により国から切り離した大学や研究機関に対して、どこまでそうした手立てを取れるのか?という疑問があります。
     ついでに言えば、例えば文科省や国立大学系がそれを実現したとしても、公私立大学や、文科省系以外の研究機関への恩恵というのは恐らくないでしょう。
  • シュプリンガーを全部切る前に必要な雑誌を吟味する努力はしたのか?
    →その台詞、山口大図書館の人の前で言ってみろ(笑)、って思いました。当然学内の意見を募ってさんざん吟味はしてる筈。または、シュプリンガーであれば他の大学でも大概購読しているのでそちらへのILLで済ませる方が、電子ジャーナルを契約し続けるより安上がりで、それが耐えられない場合は研究室で買ってね、っていうことではないか?とも推測しております。
     ところで山口大はシュプリンガーの冊子体は残しているのでしょうか?確かあの会社は冊子体と電子ジャーナルの契約は別扱いだけど、電子ジャーナル購読による冊子体の割引制度というのがあったと思います。電子ジャーナルを中止することで冊子体の購読価格が高くなってるのではないかと心配です。

 これ以上反応していると、自分の知識不足のボロが出てきそうなので、この辺にしておきます。

(2008.6.21付記)
 研究費の図書費への振替について書かせていただいた、
「しかし、それで多少の値上げ分補填は可能だけど、根本的解決にはなっていません。」
に関して、一言だけ補足。
 だって補填しても雑誌の値上げは止められないしぃ、という意味でこういう書き方をしました。
 あと予算区分上、研究費と一口に言っても複数区分があって、図書費と同じ区分に属するものは振替できるけど、違うものからは振替できなかったりします。そう言う意味でも限りはあるかと。
 それから、研究者が自分で獲得する予算として科研費がありますが、科研費の直接経費を図書館で購読する雑誌の購入費に充てることはできなかったかと思います。所属機関に交付される間接経費を、「図書館の整備、維持及び運営経費」に充当することは制度上できるようですが、やはり雑誌に充てることはできないのではないかと。間違ってたらどなたか突っ込んでください。

 私の文章ですが、感覚的にダラ書きする傾向があるもので、緻密さ、厳密さを重視する理系な方には分かりづらいかと思います。でもこういう書き方しかできないのでどうかご勘弁を(^_^;)。

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