市立図書館による農業支援
栃木県にある小山市立中央図書館の方のお話を伺う機会がありました。第1次産業と第2次産業の双方が発展している地方都市の図書館におけるビジネス支援として、「農業支援」を謳い実践しているという話は聞いたことがありましたが、具体的な事例をつぶさに伺うのは初めてでした。
平成17年度から一般的なビジネス支援は実践されていたとのことですが、平成19年度に農業支援サービス事業が文科省の委託事業に採択され、予算を確保。予算が配分されたのが2007年6月で、それからわずか8ヶ月の予算年度内に、図書館内への「農業支援コーナー」の設置による関係資料展示、レファレンス、地産地消ブランドの紹介や、県の農業振興事務所やJAの協力を得た「農業なんでも相談室」の開催、Webでの「おやま地産地消ライブラリー」の公開等、予算終了後の現在も続く支援事業の基礎を築き上げたそうです。
実施している内容ももちろん、新奇性もあり充実しているという印象を受けましたが、何よりもまず、国の予算という、使い途に制限も多く、一歩間違えると「お荷物」になってしまいがちなモノに、積極的に応募しただけでなく、予算が終了しても市としての継続的な事業に結びつけているというプロジェクト力に、素直に感嘆いたしました。
「そうした予算制限の下で工夫されたことがあればぜひ」
という質問を申し上げた所、「図書館はアイディアで勝負」という一言をいただきました。つまり、限られた資料費等のやり繰りに常日頃から頭を悩ませているからこそ、決して多いとは言えず、縛りも多い予算(例:件の委託事業予算では図書館蔵書や備品(つまり事業終了後も長く残る物)の購入不可)の使途を工夫し、出費を節減することができるということのようです。
図書館での「ビジネス支援」には、それは果たして図書館の本業なのか?というような意見もあるかと思いますが、小山市立の場合は「地域の情報拠点」としての図書館の立ち位置を見失うことなく、かつ利用者を「待つ」だけに留めないという積極的姿勢を忘れずに支援を行っているので、十分本業としてありだと思います。農業ビジネス支援のセミナーの受講生が、ジェラート屋、就農、野菜直売所など幅広い分野で起業してからも、節目節目で継続的に図書館のサポートを受けるにとどまらず、受講生有志の主催で新たにセミナーを開催するなどしている、という事例を嬉しそうにお話しされる図書館の方を拝見していて、そうしたことを強く感じました。
あまり気の利いた結論も出せないのですが、何と申しますか、ポジティブさと着実さが程良く同居しているのがこの支援事業、そしてこの図書館の美点だと思います。私の中の「一度実際に訪問してみたい図書館リスト」に、また1つ新しい館が加わりました。
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