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2009.09.27

第36回生物医学図書館員研究会(2009.9.12)

 9月12日に順天堂大で開催された「第36回生物医学図書館員研究会」という集まりに初めて行ってきました。
 参加者の何人かの方にはつくばで「医学情報サービス研究大会」が開催された時にお会いしたことがありましたが、実際にこの研究会に出るのは初めてでした。
 2週間も経ってしまってやや鮮度落ち気味、ついでに自分的に消化できていない所も多く後ろめたいのですが、とりあえずレポートを落としておきます。
 なお、同じ会のレポートは既に「次世代OPACのお話 - かめの歩みとライブラリアン再考」でも公表されています。あちらの方が内容が十分消化されていて遥かに分かりやすいと思うので、こちらは参考メモ程度ということでよろしくです。

テーマ:図書館はOPACを超えられるか?―新しい情報探索ツールがもたらすもの―

司会:矢沢さん(東邦大)
 この会は1年9ヶ月ぶりの開催とのこと。

参加者全員自己紹介
 本当に1人1人自己紹介することに驚き。図書館関係、出版関係、卸関係と有名・無名関係なく幅広く参集しているようです。

 全部ノートを載せると大変長いので、以下、色々割愛したつもりです。
 また、事例紹介ではサンメディアさんの"AQUABROWSER"やユサコさんの"Primo"のプレゼンもありましたが、図書館システムの門外漢がぐだぐだ書くより各ベンダーのサイトを見ていただいた方が分かりやすいと思うので、申し訳ありませんが割愛します。

(基調講演)
「次世代OPAC」について考える
 田辺浩介さん(Project Next-L)

 田辺さんとは何度もお会いしているのに、実際にこういう場での発表を聞く機会は何故かありませんでした。
 次世代OPACとは一体何であるか?という具体例を交えた初心者向け説明から、次世代OPACのあるべき姿、またシステムを運用する主体としての図書館・図書館員への、前向きな運用ポリシーの提案までを、親しみやすく平易な語り口で語ってくださいました。

 次世代OPACって何?については、
「ライブラリアン目線ではなく情報の探索システムとしてユーザー目線で作られたもの」(岡本さん(ARG)の定義)
に全て集約されるかと思います。
 そして、意外と波紋を呼んだらしい、以下のコメント。

  • 大学図書館の利用者たる学生はOPACの詳細画面など見ない。授業の指定図書の所蔵場所さえ分かれば良い、という調査結果もある(日本図書館情報学会での慶應大の発表)。

 この調査結果は、今までのOPACが結果として「ライブラリアン目線」で作られていたということを象徴するものであり、その後にコメントされた、

  • 「理想の未来」は何か?単一のDBにすべての書誌が収録されることである(横断検索にあらず)。世界モデルならOCLCのWorldCat Local。国内モデルならNACSIS Webcat。という考え方。

と合わせて過激に挑発的に論じようとすればいくらでもそうできてしまうと思うのですが、田辺さんはそういう展開には持っていかず、では、個々の図書館および図書館員はどうすべきか?を、次世代OPAC=Webで公開されている投稿レシピ集(クックパッド等)に例えて、次のように提案されていました。

  • 利用者がOPACに期待するのは「特定の用途に向くように加工されたデータ」つまり「調理済みの食材」。それを提供するのがこれからの図書館の役割である。
  • 今のWebは「中食産業」が真っ盛り。次世代OPACも中食である。料理を出す相手(学生 or 教員 or 図書館員?)の顔や用途(教育用途 or 事務作業用途?)を思い浮かべて作ろう。図書館員だって美味しいものが食べたいのである。
  • ではそれをたくさんの人に食べてもらうには?→大きなお店で公開し、Google検索結果からたどれるようにする。
  • 公開により料理の評価を通したコミュニケーションが生まれる可能性が出てくる。そうしたコミュニケーションを行うことすなわち図書館・図書館員の存在感を示すことである。

 個人的に感じ入ったのは、「図書館員だって美味しいものが食べたいのだ」という一言です。うんうん、最も大事なのは利用者だけど、図書館員が作っていて楽しいと思うシステムじゃなきゃ運用意欲も利用意欲(どっちも食欲?)が湧かないよね、と納得。自分はAPIを作れる知識も技術もないけれど、「書誌データと基本システムを切り離せる」次世代OPACを美味しくサーブするためのAPIにこだわる図書館員の存在がすとんと腑に落ちた一言でした。

※参考リンク:えんじゅ図書館
  [人気のあるタグ]の[生図研9月12日講演資料]から関連資料をたどれます。

(事例紹介)
Wikipediaと図書館情報資源のマッシュアップ

 清田陽司さん(東大情報基盤センター学術情報研究部門助教)

 東大とリッテル社が共同開発した、図書館情報資源(OPAC上の分類体系(BSH, NDC))とWeb情報資源(Wikipedia)を連携させてパスファインダーを自動生成する「リッテルナビゲータ」の概要説明。

 こちらは残念ながら、次世代OPAC以上に自分的に消化できていない面が多いのですが(清田先生ごめんなさい)、Wikipediaに付与されたカテゴリと図書館資源を結びつけるという発想は大変面白いと思いました。

 Wikipediaの特色として「カバレッジ」「組織化」「信頼性」を挙げ、Wikipediaを橋渡しとして(図書館情報資源という)信頼性へ導けないか?という考え方は、私的に目からウロコでした。Wikipediaの信頼性の揺らぎをウィークポイントとして考えてはいても、他のシステムとの連携でそれをカバーする、という発想はなかったので。Wikipediaのリダイレクト機能の「表記ゆれ辞書」「シソーラス」という見方も面白かったです。

 図書館屋の立場から贅沢を言えば、Japan Knowledge、ブリタニカ(有償)とか、Yahoo!百科事典(無償)のように公刊されて初めから信頼性が高い(とされる)コンテンツと連携していれば、このシステムをもっと安心感を持って使えたのに、とつい思ってしまいます。いや、私が勉強不足なだけで、そういうシステムはきっと既にあるのだろう、とは思いますが。
 ただ、1利用者としては、そうじゃなくて集合知の塊のようなWikipediaと連携するから良いのであり意義があるのだ、と理解していますし、そういう意味でこういう実験的なシステムは歓迎します。現実として、研究成果とは言え一企業の商品であり、息の長い商売につなげていくには改良の持続が課題になるのかな、と考えています。

 残りの事例紹介である、

AQUABROWSER -利用者が図書館資源のすべてを有効に活用するために-
 
松下茂さん((株)サンメディア)

Primoのご紹介
 平野覚さん(ユサコ(株)システム販売事業部)

と、最後の質疑応答タイムについては割愛しますが、自分の古い時代の図書館システムに凝り固まった頭には大変良い刺激になりました。

 近隣の居酒屋で開催された夜の懇親会にも1次会のみ参加しましたが、実に楽しかったです。特に某医薬科系大学&某ベンダーのお姉さま方、ありがとうございました!

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コメント

トラックバックありがとうございます。料理のたとえ話、面白かったのに自分の中でまとまっていなかったのですが、こちらのブログを拝見してすっきりしました。図書館員が楽しいと思えるシステムのほうが、利用者の方々にも自信を持って「ぜひ使ってください」と言えそうですね。

makiko0812さん、コメントありがとうございます。
> 図書館員が楽しいと思えるシステムのほうが、利用者の方々にも自信を持って「ぜひ使ってください」と言えそうですね。
全く同感です。
そして、今あるOPACもそうやって作られた筈だと思います。
ただ、長い道のりの途中から振り返ると「第一段階」だったというだけで。
上手く言えないのですが、決して第一段階を軽視することも、そこにすらたどり着けない図書館を嗤うことも、逆に第二段階への歩みに対し否定すること(前向きな批判は可)も、いずれもあってほしくはない、と思うのです。

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