妄想文車
今更ながら「書物蔵」の文車(ふぐるま)について取り上げたエントリを拝読いたしました。かつて文車というものが存在していたことだけは聞いたことがありましたが、専らブックトラック的なものを想像していました。しかし上記のエントリやWikipediaの記述に拠れば、屋外用文車というのが存在したそうで。貴族の所有する蔵書・文書類のうち、日常的に持ち運んで利用するものや、災害発生時に緊急避難させる必要のあるものが積まれていたということを初めて知りました。でも停めっぱなしにして車輪のメンテナンスが悪かったり、何せ平安時代で動力も人や牛ぐらいしかおらず、しかも大規模災害時に大型車両がスムーズに移動できるわけもなく、防災用途にはあまり役立っていなかったようですが。
で、文車こそブックモビルの起源だ、という書物奉行さんの記述から、自分的にはもう果てしなく妄想が広がっております。
例えばある手広く事業を手がけている企業の、屋根付きで温度・湿度が書物保存に最適なように調整された駐車場(というより車両基地)に9台のブックモビルが停められており、1台目にNDC0類、2台目に2類・・・・・・というように1類1台で蔵書が収められている様子など。でも9台が揃って車両基地にいることはなくて、例えば建築関係の仕事だと専門書を積んだ5類と、レファレンス用に0類の計2台のブックモビルが出動するとか。もちろん車内には小さめだけど作り付けの閲覧テーブルと椅子が置いてあり、ついでにコーヒーメーカーと紅茶ポットもあってお茶もできるという。
しかし、現実的に考えると1台に1類というのはいかにも効率が良くありません。やはり仕事でよく使う本をセレクトして1台に積み込むのが良さそうです。例えばもしその企業がオタク系産業(漫画、アニメ、フィギュア制作等々)を手がけているとしたら、積み込む図書は美術系+マーケティング系と言ったところでしょうか?特に近年の町おこしに萌えを活用、という風潮などを考えると、『町おこしin羽後町』辺りなんて積み込み必須。
そうすると業務用だけでなく、行った先の街で一般人にも利用開放するというのも良いかも。もちろん資料の複写等は法律の制限上難しいでしょうし、貸出もできないかも知れませんが、資料が欲しい人には購入のための仲介サービスを行うなどしてカバー(六本木ライブラリー方式)。その場合、痛車ならぬ痛ブックモビルで巡回したら楽しそうです。でもそうすると所謂隠れオタクの方が近寄りがたくなり、潜在的需要を掘り起こすのは難しくなりそうなので、あまり暴走したデザインにはできないでしょうね。
……妄想が広がりすぎました。少し真面目(?)な話もして終わります。
そういえば所謂普通の公共図書館で運用されているブックモビルは、多分遍く利用されそうな蔵書をまんべんなくセレクトして積み込んでいるのだと思いますが、これって本当にまんべんなく積み込む必要があるのでしょうか?たまには蔵書のテーマ展示ならぬ「テーマブックモビル」なんていうのもあっても良いんじゃないかな?と思うのです。もっとも、あまり狭いテーマだと冊数が揃わず、苦し紛れのラインナップになってしまいそうですし、普通のまんべんない蔵書を積んだブックモビルの一角にテーマ蔵書コーナーを設けるとか、そういう運用が落としどころになりそうな気がします。私ごときが言わなくても既に実践している図書館はありそうですけど。
ブックモビルは作成やメンテナンスに経費のかかる特殊車両であり、自治体の財政事情により運行減少・廃止されがちな資産ではありますが、折角「住民コミュニティの中に自ら入り込んでいく」貴重な媒体なのですから、もっと幅広い活用がなされても良いのに、と廃止等の報道を目にする度残念です。そういう意味で、今や「前時代の事例」として見られがちな、ブックモビルだけで図書館を運営していた「移動図書館ひまわり号」はとても良い発想だったと思います。
そういえば「全国訪問おはなし隊」なんてのもありましたね。あれの大人版を誰かやってくれると良いのに、と大きいお友達としては願ってしまうわけです。今のところは「じてんしゃ図書館」辺りがそれに当たるのでしょうか。企業や個人じゃなくて実際の図書館でこういう試みがあっても良いんじゃないかと思うのです。
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