「本を送りません宣言」を読んで考える
昨今一部にて話題の「本を送りません宣言」について、少し語っておきます。
この宣言文は未だ「第一版」(2012年1月17日)であり、今後加筆修正の可能性があるものです。
宣言の「前文」「本文」「解説」、そして「それでも「本を送る」際の目安10ヶ条」に至るまで、隅から隅までじっくり目を通さない限り、時に善意に基づく支援を否定するものとも誤解されがちなこの宣言の内容には、賛否両論が渦巻いているようです。各種意見の中では、以下のブログが、この宣言の内容に対し、決して感情的に脊髄反射することなく、中立的に冷静に読み解いた上できちんと着地点を見つけていて良い感じだと思いました。
「本を送りません宣言」ってなんだ?? | 図書館長風味-なぐも通信
「本を送りません宣言」ってなんだ?? その2 | 図書館長風味-なぐも通信
私自身は概ね上記のブログの見解に賛同します。特に、「図書館復興のため」など目的が明確で、支援の心が形として見える贈り物として最適と多くの支援者が考えたのが本であり、それ故に集まりすぎてしまったのだという分析点など、正にその通り、と思いました。
1つだけ、宣言文に付け加えて語りたい所があるとすれば、 「私たちは通常、少なくとも「古本」を大切な誰かに贈りません」の行に対してでしょうか。
自分の場合、実際の所、手元に置けなくなった本であっても、それが読んで面白かった一押しの本であるならば「大切な誰か」に贈ることはあります。但し、それは相手の顔が見える場合の話です。
今回のような場合、自身の手を離れた蔵書達は、縁もゆかりもないどこかの人の手に渡ります。その時、誰かの「蔵書」は、持ち主の手を離れた「古本」に変わります。その古本は、自分が被災者の立場になった時には「もらって嬉しいと心の底から思える本」かも知れませんが、全ての人がそう感じるかはかなりの「賭け」です。ましてやそれがすり切れた状態の良くない本であるなら尚更です。
客観的に見て、「大切に手元に持っていた蔵書を捨てるよりは、運が良ければ誰かが読んでくれるかも知れないだけまし」という動機に基づく善意自体は決して間違ったものではないと考えます。
また、過去に各家庭で不要になった本の寄贈により作られた図書館の存在も存じていますし、現在進行形でそうした本の収集手段を執ることにより、被災地で家庭文庫をオープンすべく努力されている方などがいらっしゃることも存じています。
しかし、自分は同時に、全国・全世界から集まったたくさんの善意が、あまりにたくさん過ぎて逆に被災地の負担になる場合がある現実も、身に染みて存じています。だから、この宣言に対し抵抗感を覚える方や、宣言を読むことにより支援への気後れを覚える方が存在する可能性を認めながらも、宣言には賛同せずにいられないのです。
ちなみに、これは恐らく誤解されがちなポイントかと思いますが、「古本だから良くない」ならば「新本なら良い」か?と言うと決してそうではありません。新本であっても、現場のニーズを超過すれば同じことになってしまいます。それが、宣言で「新品を贈ることにも慎重にふるまいます」「新品を含め、被災地や被災者に「本」を送りません」と記載されている所以でしょう。
なお、「本を送りません宣言」の主語である「私たち」は、saveMLAKなど特定の集団を指すのではなく、あくまで「同じ意識の方々全員」であると、宣言の前文の前文(宣言の前提文?)に記されています。自分自身は個人的事情によりこの宣言への署名にはまだ至れておりませんが、少なくとも意識の共有はし続けていたいと考えています。少しでも多くの、「本による支援」を考えたことのある「私たち」、あるいは実践したことのある「私たち」に、是非宣言文を隅々までご一読の上、今後も引き続き、適切な状況下において「ベストタイミングで支援」(「なぐも通信」より引用)していくとはどういうことであるか?を考えていただける機会としていただけるならば、喜ばしく思います。
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