2013年を述懐する
2013年1月
南三陸町図書館のオーストラリアから贈られた「コアラ館」の再開作業お手伝いへ出向きました(1月19~21日滞在)。コアラ館の図書館はあくまで次のステージに向かうまでの仮設です。
【連載】県立図書館「廃止」を問う(3)=手に取ることで「出会う」/神奈川:ローカルニュース : ニュース : カナロコ -- 神奈川新聞社
その後閲覧・貸出廃止案は異論が提示され撤回されたようですが、移転問題は今なお継続検討中のようです。
自分自身の話ではないのですが、職場の大先輩のお子さんが震災ボランティアをきっかけに東北に移住し、復興支援事業に従事しているという話をこの頃知りました。その後めでたくご結婚、ご夫妻で現地で生活を始められたように聞いています。ええ話や。
代替時給180円 図書館で行われた低賃金労働 〈AERA〉-朝日新聞出版|dot.(ドット)
そう言えば、司書は厳密に言えば「国家資格」じゃないぞ、という指摘がTwitterでありました。講義の受講と単位の取得で資格は得られるけど、国家試験で取得する資格ではないということで。
月初めは筑波大の震災シンポジウムを聴講するなどしていました。
シンポジウム「大災害における文化遺産の救出と記憶・記録の継承 ―地域コミュニティの再生のために―」(2013.3.2開催)聴講感想: 日々記―へっぽこライブラリアンの日常―
この月には、自分の部署異動の後半年を経て、すっかり頼りまくってきた上司の異動が決まったのですが、その月末に大きなトラブルが勃発。詳細は伏せますが、4月に来た新上司とろくに対話もできないままで走り回り、結局収束まで1ヶ月近く、気の抜けない日々を送りました。
これは、「ひなぎく」の業績自体、言うまでもなく素晴らしいのですが、“Hybrid Infrastructure for National Archive of the Great east japan earthquake and Innovative Knowledge Utilization”=HINAGIKUというフルネームと略称の対応付けを考えた人も凄いと思った案件でした。
前月末のトラブルをほぼ1ヶ月間引きずっていて、精神を削られる思いをしたので、細かい事はあまり思い出したくありません。
武雄市図書館 2013年4月1日(月) 9:00 リニューアルオープン
ただ、ウェブサイトの「お知らせ」を見る限り、スタッフはコンスタントに仕事している感じがするので、良きにつけ悪しきにつけ器の要素ばかりが注目されて(それが市長殿の戦略なので仕方ない面もありますが)、図書館としての活動の評価に結びつかないのは、この図書館の不幸であると思うのです。
図書館がどんな設備を備えているか?だけでなく、市民がこの図書館を使って何かを実践するために図書館がどんなサービスを提供しているか?が問われるのが最近の潮流だと思うのですが、これまであまりその辺の話が見えてこないのですね。
この図書館の美点も問題点も比較的公平に並べて評価しているのは、以下でレポートされている「図書館総合展」のフォーラムでの糸賀先生のご発言かと思います。
図書館総合展「"武雄市図書館"を検証する」全文(樋渡啓祐市長、糸賀雅児教授、CCC高橋聡さん、湯浅俊彦教授)―激論、進化する公立図書館か、公設民営のブックカフェか?
あまり記憶がありませんが、広報業務の研修出張などもあり、結構楽しかったのではないかと思います。嵐の前の静けさ。
学校司書の図書の転売事件の感想まとめ - Togetterまとめ
中学校の学校司書の方が学校図書館に蔵書として納品された本を3千冊転売し、代金を生活に充てており、しかもそれが3年間発覚しなかったという事件です。
この犯罪の背景には学校司書(基本は非常勤職員)の薄給という問題もありますが、「誰も気づかなかった」という事実が、この学校で図書館業務がいかに任せきりでチェックされていなかったかを如実に示しているという点で、かなり切ない事件でした。
「検索してはいけない」で有名な、あの愛生会病院HPが閉鎖へ | ICT Headline directed by P検
愛生会病院のHP(あれは正に『ウェブサイト』ではなく『HP』でした)と言えば、管理者は至って真剣であるにも関わらずネタサイトとして認知されてしまった代表例ですが、2000年代初頭にあのサイトで楽しませていただいた一人としては、閉鎖は誠に惜しいことでした。
この辺りから新しい仕事で少しばかり忙しくなってまいりました。その余波がこれを書いている現在でも継続中です(^_^;)。
大学図書館職員初任者マニュアル 第二版
東北地区大学図書館協議会研修部会で作成されたマニュアル。人を育てる余裕が無くなってきている、という事情は多くの大学図書館(蛇足ながら研究図書館も)が抱えていると思いますが、こうしてきちんと業務マニュアルを共編でまとめ上げられる所に大学図書館のポテンシャルの高さを感じました。
図書館デジタル化の波紋、パブリックアクセスと出版は両立するか | カーリルのブログ
理屈では「それは違う」と言えるけれど、では汗水垂らした人の感情をどう収めるのか?ということについて考えさせられた件でした。
仕事面では精神的にかなり落ちてました。生活面では『あまちゃん』にどっぷりはまってました(^_^;)。
千代田区ホームページ - 千代田区立日比谷図書文化館における映画「選挙」上映会に関する区の対応について
TRCの脇の甘さと千代田区の他人事感で満ちたコメントとに、「どっちもどっち」と思わずにいられませんでした。
TSUTAYA、宮城・多賀城市の図書館をプロデュース 「お酒も食事もできる図書館に」 - ITmedia ニュース
多賀城市の件は、最初に報道されたのは5月でしたが、CCCと市が合意したのは7月11日の話でした。あまり気をつけてウォッチできているわけではありませんが、取りあえず経過観察が必要かと思います。
月初めから盛り上がったのはこちら。
ラピュタ図書館員 - Togetterまとめ
第44回大学図書館問題研究会全国大会(会場:つくば)に参加しました。前年の京都大会に引き続いての参加でした。
第44回ダイトケン全国大会20130810-12 - Togetter
分科会はディスカバリサービスとオープンアクセスに参加。自分は大学所属ではない上、現在図書館担当ですらないので、問題を共有しきれない点が山ほどあって寂しいところもありましたが、現状の課題の把握と認識には役立ったと思います。
E1459 - DSpaceコミッター就任の鈴木敬二さんにインタビュー | カレントアウェアネス・ポータル
この記事に関して思った所は次に記しました。
「システムを作りたい人」、そして「システムを作ること」について考えてみた。: 日々記―へっぽこライブラリアンの日常―
全国で水害が多発したこの月のもう1つのニュースはこちら。
番外編:水害からの復旧::山口大学総合図書館改修日記
記事の文面と写真から、被害の大きさと復旧作業のハードさが伝わって来ます。当時改修工事のため休館中だった図書館も、12月現在では無事改修が成り再開しているようです。
2013年9月
以下のイベントに参加しました。
E1486 - Code4Lib JAPANカンファレンス宮城県南三陸町にて初の開催 | カレントアウェアネス・ポータル
このイベントで心に響いたことはいくつかあるのですが、特に感じ入った内容を当時のツイートから抜き出しておきます。
「吉野家の定理」:「やすい」=公的サービスの前提条件。「はやい」のは七難隠す。「うまい」のは高度なサービス、あいまい検索などに応えられることだが、「はやい」と「うまい」どちらを取るか。どんなに高度な検索であっても遅ければユーザはもう使ってくれない。 #c4ljp
— heppoko_lib (@heppoko_lib) 2013, 8月 31
(技術的にも恐らく凄いのだと思うけれど、物を言うのは、誰の目に入っている筈の情報のどこに目を付けスポットを当てて、いかにそれらを「役立つ情報」として活用していくか、という発想力の鋭さだなあ、と、前田さんの発表を拝聴して思った。) #c4ljp
— heppoko_lib (@heppoko_lib) 2013, 8月 31
( https://t.co/kBVJYRXDL8 の件はコーディングの才能がない自分でも納得できる。コードに限らず物事が上手く動かないのはどこかに必ず、指示の仕方の間違いや勘違い、あるいは理論的な破綻などと言った原因があるのだ。) #c4ljp
— heppoko_lib (@heppoko_lib) 2013, 9月 1
Code4Lib JAPANカンファレンス2013 #c4ljp - Togetterまとめ
なお、このイベント以前にも南三陸町は2回ほど訪問していましたが、この訪問の時、初めて町役場の防災庁舎跡で震災犠牲者の冥福を祈りました(それまでは遠くから見つめるだけでした)。自分は震災の後「3階建てなんて、低い建物に逃げてさえいなければ」と嘆いていた者ですが、3階建て、意外に高さがありました。外壁が存在していた頃を生で見ていないので断言はできませんが、これだけ高さがあり堅牢そうな建物なら皆信頼を置くだろう、と感じ入った次第です。
2013年10月
第15回図書館総合展駆け足参加報告(2013.10.29): 日々記―へっぽこライブラリアンの日常―
われわれの館~図書館司書就職支援の館~
の閉鎖も10月20日のことでした。
E1503 - われわれの館~図書館司書就職支援の館~管理人インタビュー | カレントアウェアネス・ポータル
のインタビューを読むと、個人の力で運営していくのはガチで限界だったようですので(痛いほど理解)、やはり継続性のある事業として志が受け継がれていって欲しい、と考えます。
それから、次のツイートも10月のことでした。
図書館が新刊本をじゃんじゃん貸すのは、住民が払った税金に対する公共サービスでもあるし、文化的にも必要だし、まあ、しゃあないです。それに、少なくとも1冊は購入してもらっています。でも、これはひどい。互いに建前は守りたいところです。http://t.co/FQBTIBLTc4
— 万城目学 (@maqime) 2013, 10月 25
2013年11月
前述の図書館総合展の武雄市図書館に関するフォーラムにおいて、登壇者の方が来場者名簿を読み上げ来場者を名指しした件が、以下のブログで問題として採り上げられました。
何であなたが知っているの?|浅慮相乗のブログ
一方で、「登壇者や会の参加者には渡すのが普通。むしろ渡さなくてどうする」という常識と「例え名簿の配付範囲が限られていても不用意に渡すべきではない」という常識とは併存し得ますし、現実に併存しています。
自身で譲れない常識の一線を保つことはもちろん大事ですが、他人の常識を単純に非常識と一刀両断することは自分は好みませんし、非常識と判断するには議論が尽くされるべきと認識した一件でした。
2013年12月
特定秘密保護法案に関する声明_JLA図書館の自由委員会
強行採決という手段は全くいただけないものであったと思います。また、戦前に起きた、軍需工場の工員をモデルに絵を描いただけで逮捕された事件のようなことが再度起きて欲しくない、とも考えます。
ただ、国家安全保障の必要性と、閾値としての法律の必要性は感じているので闇雲に反対するつもりはありません。今後、単に今後法律を運用する役人が判断と措置を誤らなければ良いだけのことです。役人の、恣意に左右されぬ公明な判断力が今以上に問われることになると考えています。
明治大学和泉図書館のブックツリー - Togetterまとめ
これについては散々書いたので(^_^;)、ここでは省略します。